スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

「ジャズ・クラブ黄金時代」小川隆夫

評論家の小川隆夫氏が1981年から1983年にアメリカ留学していた際の日記を書籍化したもの。音楽関係のみの抜粋なのに600ページ以上の膨大な量です。1日2回のはしごも含めてとんでもない数のライブを聴きに行っていて(726日間の滞在で614回、1.2日に1回ライブに行っている計算)、まだ結婚して数年、昼間は大学院での勉強もあったのにこの人いったい何を考えているんだと思うすさまじいドキュメンタリー。

まあそんなことはこのブログではどうでもよくて、ゲッツ関係の記載があったのでそれをここで紹介します。

まず1981年10月22日、「ファットチューズデイズ」で少し顔を覚えられて、マネージャーに声をかけられたがこれがゲッツの息子のスティーブだったそう。1952年録音「Stan Getz Plays」のジャケットの子どもです。

同じく1981年の11月10日、「ブルーノート」にゲッツが出演予定だったのに当日行ったらキャンセルになっていたとのこと。

1982年2月11日、おっと、ほんの数日前にゲッツが55歳の誕生日を迎えていますね、このときは「ファットチューズデイズ」でライブを聴けたようです。セットリストを見るといくつか音源として残っていない選曲もあります。小川氏が「「Getz/Gilberto」が愛聴盤なんです」と言ったらゲッツは「あれには救われたね」とつぶやいてニヤリと笑ったそうですが、いやいや小川氏、「超」がつくほどのジャズマニアなのにここで「Getz/Gilberto」なんて言ってはダメですよ、ミーハーみたいに思われるw 確かに「Getz/Gilberto」は名盤なんだけどここはかっこつけて別のアルバムを出さないと。本人と話をはずませるためには「「Focus」最高ですね!」というのもいいか。不本意だけど。自分だったら何と言おうか、「「People Time」聴きました!」でしょうか。おっと、まだ1982年には録音されていなかった(1991年録音)。

1982年6月はクール・ジャズ・フェスティバル。6月29日に「フォー・ブラザーズ」と題してゲッツ、ズート・シムズ、アル・コーン、ジミー・ジュフリーの4管演奏。ウディ・ハーマン楽団のメンバーとは違いますが。ここでも知らない曲が演奏されています。クール・ジャズ・フェスティバルはまだ続き、翌30日はレスター・ヤングを偲ぶセッションでゲッツが3曲ほど参加した模様。さらに翌7月1日、セロニアス・モンクのトリビュートですごい組み合わせが実現。ゲッツ、ディジー・ガレスピーマッコイ・タイナー、エディ・ゴメス、シェリー・マンのクインテット。このメンバーで「Trinkle Tinkle」「'Round Midnight」。え、ゲッツが「Trinkle Tinkle」を演奏したの?

1982年12月12日、スティーブから「今度親父のレコーディングを見に来ないか」と言われる。そして1983年1月12日、実際にレコーディングの見学。なんと「Poetry」のレコーディングだったそうです。ゲッツは気難しくなく、ジョークを言ってみんなを和ませていたとのこと。

と、ゲッツ関係の記述はこんなところでした。

ボブ・ブルックマイヤーとの共演

ゲッツのボブ・ブルックマイヤーとの共演については、大きく分けて3つの時期があります。

まず1953~1954年。アルバムでいうと「Interpretations By The Stan Getz Quintet #3」「More West Coast Jazz」や「Live At The Hi-Hat 1953 Vol.1 」「Live At The Hi-Hat 1953 Vol.2」の頃。ゲッツもまだクールで、数年前のプレイに戻ったかのように演奏しています。「Interpretations By The Stan Getz Quintet #3」はあまりパッとしないブルックマイヤーのオリジナル曲のせいで、いいアルバムなのに地味な印象です。同時期なのに「」「Stan Getz At The Shrine」はエモーショナル。それと1954年11月9日の記事でも言った通り「Stan Getz & Cool Sounds」での録音ですね。

続いては1960年代前半。1961年「Stan Getz Bob Brookmeyer Recorded Fall 1961」と1964年「Bob Brookmeyer & Friends」ちょっと間が空きますが、欧州から帰ってきたゲッツとの再共演です。

そして最後は1977~1978年。ゲッツのレギュラーバンドの中でもイマイチな時代、そうアンディ・ラヴァーンがいてラテンパーカッションが常時いたあの時期です。「Jazzbühne Berlin '78 」「Utopia」「Academy Of Jazz」などです。この時期は「Another World」「Poetry In Jazz」などブルックマイヤーなしで同じような音楽を録音していますが、ライブではフロントを増強したんですね。その方が楽しめます。

ブルックマイヤーはいろいろ楽曲を提供してくれるのがおもしろい。「Stan Getz At The Shrine」での曲以外はどれもイマイチだったりはするんだけど、それでも彼のオリジナリティが感じられて聴いていて心地よいです。プレイ自体はモコモコしていて、また、たま~にひどくかっこ悪いフレーズを吹く。聴いていてこちらの方が共感性羞恥。モコモコするのはバルブトロンボーンの特徴なのかな。

ルースト録音について

ゲッツのルースト録音は、大きく分けると「1.スタジオ録音」「2.メトロノーム音源」「3.ストーリーヴィルのライブ音源」「4.ジョニー・スミスのリーダーセッション」の4つに分かれます。

当初10インチLPなどに散逸して発表されていたものが、(多分)1980年代にセッション順にまとめて改めて発表されました。それが「The Complete Roost Sessions Vol.1」「The Complete Roost Sessions Vol.2」です。ただしこれはスタジオ録音限定、ゲッツのリーダーセッション限定のなんちゃってコンプリート。さらに「The Sound」に収録されているストックホルム録音のメトロノーム音源は権利関係が違うからということで、除外。「The Sound」のジャケット写真を使っているのに・・・とはいえ、「The Sound」はアルバム構成もいいからコンプリートに音源保有するだけでなく重複してもいいからアルバム所有すべきではあります。

それと、LP2枚に分かれていた「Stan Getz At Storyville」が1CDで発売されました。しかし未発表3テイクはここには収録されていません。「The Sound」のCD化はけっこう後でしたが、実現。ジョニー・スミスの「Moonlight In Vermont」も未発表別テイクを含めてCD化し、これですべて揃ったかと思いきや、カウント・ベイシー楽団との共演3テイクがもれているんですね。参加曲は「Municipal Auditorium Topeka Kansas February 55」に似ていますがよく見ると違うし、これは1955年、ルースト録音は1954年です。

で、ながながとお話してきましたが、結局いまは「Complete Roost Recordings」を買えばルースト音源はすべて入手できます。

「ゲッツ参加曲以外も聴いてみたい」という意見もありそうですが、はっきり言って「Moonlight In Vermont」はアルバム単位で聴いてもつまらない(怒られそうですが・・・)し、「Municipal Auditorium Topeka Kansas February 55」も同様です。わざわざゲッツ不参加テイクをも求めて買う必要ないかなと思います。昔は「Complete Roost Recordings」などなかったので買ってしまっていますけど。

とはいえ、メトロノーム音源である「The Sound」のB面はここには収録されていません。ですので、もっとも効率よく集めるには「Complete Roost Recordings」と「The Sound」を購入する必要があります。