スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

欧州時代

1955年に「Stan Getz In Stockholm」を録音していますが、ゲッツの本格的な北欧時代はは1958年4月ころから。妻のモニカの出産のためにモニカの祖国スウェーデンに移り住みます。どれだけ長くいるつもりだったのかはわかりません。

スウェーデン時代には欧州ツアーを積極的にこなし、たくさん音源を残しています。北欧時代というよりは欧州時代というべきですね。スタジオ録音では「Nothing But The Blues / Herb Ellis」にボーナストラックとして収録されている1958年の「Les Tricheurs」があり、おそらく最後はドイツで1960年3月に録音された「Cool Velvet」です。この1960年3月という月を覚えておいてください。

そのほかにも、現地録音をヴァーヴで発表したスウェーデン録音「Imported From Europe」(もとのセッションは「In Sweden1958-60」収録)、それからデンマーク録音の「Stan Getz At Large」(もとのセッションは「Stan Getz At Large Plus Vol.1,2」収録)。

ライブではフランス録音(と詳細不明録音の)「With European Friends」「'Round Midnight In Paris」「Live In Paris 1959」、デンマーク録音「Stan Getz In Denmark」、ノルウェーデンマーク録音を集めた「Scandinavian Days」、ポーランド録音の「Stan Getz In Warsaw」「Polish Radio Jazz Archives 01」。さらにありますよ、オランダ、ドイツ&スイス録音「Live In Amsterdam, Dusseldorf & Zurich 1960」、スウェーデンデンマーク録音「Without A Song」、スウェーデン録音「Stan Getz At Nalen With Bengt Hallberg」「At Nalen-Live In The Swedish Harlem」がありますし、スイス録音「Swiss Radio Days Jazz Series Vol.29」も。その他、「Sweetie Pie」や「The Golden Years, Vol. 1 1952-1958」にもその頃の録音が。後者は例のドナルド・バードとの共演がドイツ録音ですね。

そして1960年3月28日ライブ「LIve In Düsseldorf 1960」、これはJATP興行の一環でしたが、ゲッツは欧州で合流したわけですね。このとき、ジョン・コルトレーンを擁するマイルス・デイヴィスクインテットも参加しました。そして、ゲッツとコルトレーンの共演が実現するわけです。その模様はこちら「Duesseldorf 1960 /John Coltrane」に収録されています。

ゲッツがまったくコルトレーンの音楽を聴いていなかったわけではないでしょうけど、直接の共演は大いなる刺激を受けたようで、ゲッツはアメリカに戻らなければならないと強く思うようになります。ダウンビート誌では10年間、メトロノーム誌では11年間首位をとっていたテナーサックス部門でコルトレーンについに抜かれたことも影響したようです。

1960年11月、「Complete Live In Stockholm. November 21 1960 /Jazz At The Philharmonic」に欧州からの合流で参加し、翌1961年1月19日に帰米するのでした。

「Get Happy」

(ここで言っていることはすべて「私の知る限り」の話なので、間違ってたらすみません)

スタンダード「Get Happy」、ちょっと数えてみたら、このブログを書いている時点でわかるかぎり、ゲッツは5テイクの録音を残しています。動画は追いきれないのでノーカウント。あれ?もっとたくさん録音しているという印象でしたが。

やはり1955年録音のスタジオ盤「Stan Getz In Stockholm」のものはきれいにまとまっているしバッキングも揃っている。ピアノイントロが強力で2テナーの「Scandinavian Days」も、テンポが速くいい演奏。臨場感ある録音もよい。発掘音源「At Nalen-Live In The Swedish Harlem」1959年、これはイントロがアフロキューバンタッチになっているという特徴がある。それから1960年の「Without A Song」では「Tin Tin Deo」を引用したイントロがおもしろい。

しかし実は一番「おもしろい」のが「Live From 1952 To 1955」収録のもの。1955年1月23日の録音なのでこの中では一番古い。上述「Stan Getz In Stockholm」は1955年12月16日録音。

このテイク、何がおもしろいのか。トニー・フルセラとのクインテットだからか?違います、なんとこのテイク、メジャーキーなんですよ。そう、ゲッツは通常「Get Happy」を、マイナーキーにアレンジして演奏してます。これがなんだかかっこわるくて、演奏内容はいいんだけど好きになれなかったんですけどね。ですが5つのテイクのうち一番古いものでは、原曲どおりメジャーキーで演奏してるんです。その後、なぜか(誰かが)マイナーにすることを思いついて、ずっとそれで演奏するようになってしまった。

「Spring Can Really Hang You Up The Most」

(ここで言っていることはすべて「私の知る限り」の話なので、間違ってたらすみません)

バラード「Spring Can Really Hang You Up The Most」、ちょっと数えてみたら、このブログを書いている時点でわかるかぎり、ゲッツは9テイクの録音を残しています。動画は追いきれないのでノーカウント。1960年の欧州ツアーで演奏していたので、1960年スイス、ポーランドデンマーク、オランダのライブ音源が残っています。それから1961年アメリカに戻ってきてからの「Getz At The Gate」、1969年には「Jazz At Radio Rai」なども。

この曲、1コーラスが長いのでテーマを演奏するだけで終わりのときが多いのですが、「Paris 1979」のようにピアノソロが入るときもあります。「Getz At The Gate」はゲッツのソロがある。それからあの美しいイントロがあるヴァージョンがあるのは7テイク、ないヴァージョンは2テイク。

おもしろいのは、まずスタジオ盤、1963年オーケストラ入りの「Reflections」。ギターをバックにすごくリヴァーヴのかかったゲッツの音色がムーディな空間を作る不思議なテイクです。

それからアルバート・デイリーとの1983年のデュオ「Poetry /Stan Getz & Albert Dailey」収録のテイク。この曲の録音としては(残っている限りでは)ゲッツの最後の演奏で、静謐でいままでのなかでも特にじっくりと聴かせるものになっていると思います。ピアノなんだろうけど、うっすらとストリングスがかぶさるように聴こえる。

最後に、ゲッツ参加曲も収録されている「Jazz At The Santa Monica Civic '72」では、エラ・フィッツジェラルドによるボーカルも収録されています。この曲にはゲッツは参加していないけど。