ゲッツの最高傑作とする人もいる作品。確かに良い内容で、ジャケットも素晴らしい。ルー・レヴィ、リロイ・ヴィネガー、シェリー・マンのリズムセクションにコンテ・カンドリのトランペットを加えたクインテット編成。
映画「ベニーグッドマン物語」のサントラ録音と撮影のためにハリウッドに来ていたゲッツ。ハリウッドでは午前中に撮影があったので、自由な時間があった夜にセッションを行っていたメンバーで録音されたものがこのアルバム。ゲッツ以外のメンバーは映画サントラには参加してませんが。
いろいろなところでノーマン・グランツのいい加減さを強調するために書かれているように、録音こそ西海岸で行われたもののメンバー全員が東海岸の出身者(まあ、ウエストコーストジャズの代名詞的なジェリー・マリガンもチェット・ベイカーも西海岸出身ではないですけど)。選曲もマイルス・デイヴィスの「Four」や「A Night In Tunisia」など東海岸路線あり。また10年後には主要レパートリーとなる「Summertime」の初演も収録されている。
サントラではあっという間に終わることに不満があったということで、ゲッツがあえて取り上げた「S-h-i-n-e」での尽きることないソロはゲッツ生涯の名演の1つであることは間違いない。ただ、ゲッツはワンホーン・カルテットのほうが良い、という意見もあるし、2管編成がわるいわけではないけどコンテ・カンドリはどうかなあ、という意見もある。ミストーンが聴かれるし。もっと言うと、マニアはゲッツのソロこそが重要で、たいていピアノソロもなくていいと思っているw(例外はあるけど)ゲッツのソロが終わったとたんにCDで曲をスキップしたことありませんか?特に70年代以降のバラードで。
CDでは当たり前に追加されている「Split Kick」がオリジナルのレコードには収録されていなかったとは驚き。確かにその他のアルバムで聴かれる同曲や「There Will Never Be Another You」よりは派手なソロではない。でも13度の音を多用してけっこう良いソロなんだけどね。
それから、スタンダードではあるけどB級というかあまり他者が取り上げない、「S-h-i-n-e」「Suddenly It's Spring」などの選曲は、よく考えるとけっこう不思議というかレアというかおもしろいというか。
「People Time」で「East Of The Sun」に感動した人には、ここでの同曲にはガックリくるかもしれない。また、「Four」や「A Night In Tunisia」などはゲッツに合わない曲だという人もいるかも。私は、「A Night In Tunisia」はこの曲のアプローチ方法としてすごく参考になるソロだと思います。ブレイクのところをチャーリー・パーカーのように吹かなくてもいいと教えてくれる、名演。
様々な意見があるアルバムではあっても、内容はすごく良い。かなりの傑作です。