スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Broadcasts/ Stan Getz, Gerry Mulligan

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いままでいろんな海賊盤音源を聴いてきましたが、おそらくこれが最低音質。「 Live At La Spezia Jazz Festival (Italy, July 7, 1979) 」よりもひどいですよ。客席からのエアチェックで、拍手の音ですべてがかき消されて聴こえなくなります。ゲッツのソロが終わると盛大な拍手になり本当にそれ以外は聴こえなくなり、音質の悪さゆえドラムもベースも聴こえない静かなピアノソロに移っているので、わからない人が聴いたらそこで別の曲になったと思うでしょう。

それにしてもジャケットが最高ですね。なんと収録されているのはすべてゲッツカルテットの演奏で、マリガンは1曲も参加していません。お馴染みのゲッツのレギュラーカルテットですから。また、裏に記載されている曲名はめちゃくちゃ。製作者は間違ったのでなく、面倒くさくて適当に記載したのでしょうね。まあ、製作者ご本人のオリジナルタイトルらしいので、ジャズのスタンダード曲名をウソで並べるよりはマシですが。

マリガン不参加はむしろラッキーで、共演ならともかく、半分マリガンのバンドの演奏が入っていたとしたらそれは聴かなくなりますからね。40年代のコンピアルバムでのワーデル・グレイズート・シムズ、ポール・クイニシェットのテイクをまったく聴かないのは私だけではないはず。

それから、このレコードはジャズ批評119号で珍盤として紹介されていますが、ここに記載されている情報も間違っています。記事にあるような「Wave」「Con Alma」などは収録されていませんし(違うものを聴いているのか?)、同書籍掲載ディスコグラフィーの方は1曲不足しています。さらにディスコグラフィーには「スタンリー・カウエルやチック・コリアという意見もある」みたいな注意書きがありますが、ラインナップからしてもアルバート・デイリーであることは明らか。「Times Lie」でのパターンもデイリー時代のものです。ピアノソロの内容では判断できませんがチックでないことは確か。ベーシストは鈴木良雄氏であると書いていますが本当?確かに1973年頃にはゲッツのバンドに参加しているはずですが。

念のため曲名を正しくすると、

Step Up, Swing Out・・・Stan's Blues

Bossa Nova Bauble・・・Original Ballad

Pitchman・・・La Fiesta

Sandy At The Beach・・・Lover Man

Boganville Hooks・・・Desafinado

Song For Strayhorn・・・Chega De Saudade

Waltzing Matilda・・・Times Lie

Bossa Nova Bauble」、いえ、「Original Ballad」はまったくボサノヴァではありません。「海岸の日曜日」(レコード記載のスペルが間違っていますが)が「Lover Man」とは驚き。「Waltzing Matilda」、ご存じのとおり「Times Lie」はワルツではありません。あ、導入部とエンディングはワルツか。

ご丁寧に、ボサノヴァメドレーをちゃんと2曲としてカウントしているように見えますが、私は製作者が切れ目がわからずテキトーに曲数を判断した結果たまたま一致しただけだと思います。この時代以降のゲッツのバラードの特徴で、「Lover Man」は最後にゲッツのテーマに戻りませんから、上述のように拍手でバンドの音が聴こえなくなります。続くピアノのソロを別の曲と勘違いして、これを2曲にカウントしているのではないかと。

同じく上述の、ジャズ批評におけるディスコグラフィーの1曲不足というのは2曲目「Original Ballad」のこと。これはしょうがないかも。出版時には発表されていなかった「Live at Sir Morgan's Cove 1973」に収録されていた曲ですし、このタイトルもおそらく暫定的なものでしょうし、かつ、とにかく音質が悪くてよくわからないので。

アルバムの形式的な話ばかりになりましたが、音質の悪さから内容に言及するのは困難。ただ前半のゲッツはさほど悪くないですね。ボサノヴァメドレーは飛ばしすぎで走ります。最後の「Times Lie」は14分台、この数年後には20分台とかも出てくるんですよね。これはサイドメンだけをフィーチャーする曲なので、初演のチックによる奇跡的名演以外はゲッツファンにはつまらないんですよねえ。