1973年ライブの発掘音源。メンバーはアルバート・デイリー、デイブ・ホランド、ビリー・ハート。
発掘ものにありがちな、録音バランスのわるさが際立つ。それでもステレオなので、不思議な感じ。ちなみに録音バランスがわるいアルバムは大きな音量で聴くとけっこういいです。
選曲はチック・コリアとの「Captain Marvel」からのものが3つ、同じくコリアの「Litha」もあり、スタンダードも散りばめている。セロニアス・モンクの「Panonica」を(変則サイズで)やっているのが意外。この曲、コード進行が「理論上は基本的なのに個性的」なのでやりづらいんですよね。
基本的に、音質とは逆に演奏内容はかなりよい。ホランドのベースアプローチがワンパターンなのが少し気になるけど、それとは逆にハートのドラミングは多彩で縛られていない。特に1曲目の「On Green Dolphin Street」は浮遊感が漂う、いかにもこの当時のジャズ。「Tangerine」も同様にスタンダードにフレッシュな息吹を与えている。それからタイトル不明で作曲者クレジットもない「Original Ballad」も、不思議な曲想なのにゲッツが難なくこなす。
ホランドのオリジナル曲「The Oracle」は、ホランド自身は1986年まで録音しなかった(と英文ライナーに書いてある)そうで、これはレアな演奏でしょう。4分の6拍子の曲自体がハードで、ゲッツのプレイもかなりエキサイティング。3分10秒あたりや4分5秒あたりの攻め方はゲッツらしくない、そこがすごくおもしろい。作曲者ホランド自身のベースソロも素晴らしい。
「what Is This Thing Called Love?」は、そういえば珍しく1960年代から1990年代までやり続けた曲。やはりメンバーが違うと全然変わりますね。ここでの演奏は派手さを少し抑制しているような印象です。
ただ、最悪なのはいつものごとく名曲のはずの「La Fiesta」。リズムセクションの全員が曲を理解していない。まったく曲の良さを引き出さない演奏、ゲッツも単純ながら難しい曲であるため、いまいち乗り切れない。そもそも初演スタジオ録音以外はパッとしないんだけど。
特にひどいのがデイリー。イントロはなんだかハネているし、自分のソロになったところで曲をがらっと変えるけど、かっこよくもないし何がやりたいのかわからない。ベースとドラムとも意思疎通ができていないというかできていてもうまくいっていないというか。60年代のマイルス・デイビス・クインテットみたいなことをやりたかったのか、それにしても全然なっていない。このアルバムに限らず、残念ながらデイリーの演奏には良いと思えるものもあるけど不満が募るものも多い。ゲッツは常に良いサイドマンをみつけてきたと言われているけど、ホレス・シルバー、チック・コリア、ジム・マックニーリー、ケニー・バロンは良くてもデイリーはまだまだというところ。それでも良いときがあるという(このアルバムの「Lush Life」はけっこういい)ことでアンディ・ラヴァーンよりはいいけど。
7分超のインタビューを挟んで、現行CDではボーナストラックとして1971年のハノーファーにおけるドイツのオーケストラとの共演が4曲収録されています。当時ドイツツアーだったのか、この3日前にもケルンでのライブがありその模様は2曲だけですが「Jazz Collector Edition」に収録されています。このオーケストラのリーダー、ドイツ人なのでしょうけどドイツ語の名前は読めない…ドイツ語の読み方だからクルト・エデルハーゲンでいいの?
Live at Sir Morgan's Cove 1973
- アーティスト: Stan Getz
- 出版社/メーカー: Gambit Spain
- 発売日: 2011/04/12
- メディア: CD
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