スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

「Times Lie」

(ここで言っていることはすべて「私の知る限り」の話なので、間違ってたらすみません)

チック・コリアの手による「Times Lie」、ちょっと数えてみたら、このブログを書いている時点でわかるかぎり、ゲッツは6テイクの録音を残しています。動画は追いきれないのでノーカウント。

この曲の初演は1972年「Captain Marvel」。基本的にコリアのソロをフィーチャーする演奏ですが、3度の音を避けた単一ベースラインに乗って、コリアがメジャー、マイナーのカリプソ的コード進行を設定し自由に弾きまくる、当時のコリア節全開というソロが超名演。断片的に挟まるリフがなぜか素人の作曲に聴こえるという不思議な曲ですが。ゲッツはほとんどソロを取りません。まあ、そういう曲なんですね。

Complete Live At Montreux 1972」でも同様の構成で、これならゲッツのソロがずっと出てこなくても楽しめます。

で、これが1973年以降バンドのピアニストがコリアからアルバート・デイリーに代わってからが最悪です。単一ベースラインはワンコードということではなく、そのうえでピアニストが自由にコードを設定して演奏するからかっこよく聴いてて楽しいのですが、デイリーは単にワンコードで演奏するだけ。おまけにゲッツはこの曲を「ピアニストをフィーチャーする曲」でなく「サイドメンをフィーチャーする曲」にしてしまった。そうすると、単にワンコード、ときにはテンポルバートで、ピアニストが延々と演奏したあとベーシストが延々と演奏してドラマーがドカドカ叩いて、最後にゲッツが戻ってきてちょっと吹いて終わり、という曲になってしまった。そんなのが3テイク残っていますが、特にすごいのが1974年の「Grand Stan」。レコードのB面は21分もあるこの曲のみですが、ゲッツは最初のテーマを吹いたあとずっと音なしでサイドメンのソロが続き、ラスト1分だけソロを取るという、なんとも言えない演奏。他のテイクよりもこれが一番長いですね。これはもともとサイドメンをフィーチャーする曲だから、ゲッツの出番の短さをもって「手抜きライブ」とは言えないかもしれませんが、ちなみに言っておくとこのアルバムは他の曲もゲッツのソロが短く、手抜き疑惑が残ります。

そんな中、1976年の「Jazz Gala Concert /Peter Herbolzheimer」は特殊な演奏。ゲッツのコンボでなく客演なわけですが、なんとソロイストはゲッツだけ、おまけに普段10分以上になる曲なのに4分余りと短い演奏w。これは貴重な録音と言えるでしょう。