スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

「Night And Day」

(ここで言っていることはすべて「私の知る限り」の話なので、間違ってたらすみません)

コール・ポーターによるスタンダード曲「Night And Day」、ちょっと数えてみたら、このブログを書いている時点でわかるかぎり、ゲッツは9テイクの録音を残しています。と言ってもリーダー録音ばかりではありません。一番古い1943年のものはジャック・ティーガーデン楽団におけるもの。ゲッツのソロもありますが、プロになってからの演奏スタイルの面影はありません。まだ16歳の頃の演奏ですから。

有名な「The Sound」での録音もいいですし、ビル・エヴァンスとのスタジオ録音コンプリートボックスでの録音も含めると3テイク)がまたすばらしい。これはエヴァンスのソロも涙が出そうなくらい良くて、ロン・カーターエルヴィン・ジョーンズというリズム隊を選択したクリード・テイラーは酔っていたのではないかと思います。リズム隊が違っていればもっといい演奏になっていたのに。

欧州録音の「Stan Getz At Large」における演奏は、8~9小節目のコード進行のチェンジ(日本で誤用される「進行」という意味でなく「変更」という意味で。リハモと呼びたくないレベル)が許しがたくて、作曲家を愚弄しているのではないかと思うくらい。これがなければ、他の録音とはまったく違うテンポがまた1つの歴史的名演を生んだのに、と思います。そうそう、「Night And Day」の特徴は、スローでもアップテンポでも演奏できるというところにあります。

しかしやはり最高なのは「People Time」での録音でしょう。コンプリート盤では3つのテイクが収録されています。当初発表テイクの完璧さは異常なほどで、真似したいフレーズやアプローチの宝庫です。というか、真似しています。トニックにおけるシンプルで素直なアッパーストラクチャーとか。

個人的には、ポーターの曲の中で一番好きなので、ゲッツが名演を残しているのが本当にうれしい。