スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Stan Getz & Cool Sounds

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5つのセッションから収録されている。それぞれのセッションからの寄せ集めと言えばそうかもしれないけど、決して内容が劣っているわけでないので。

まず最初の4曲は、「West Coast Jazz」から4日後に、トランペットのコンテ・カンドリが抜けて録音されたもの。だからほとんど「West Coast Jazz」のアウトテイクと思っていいです。ところが全体的に使用音域が低く、まるでクール時代に逆戻りしたかのように淡々とした演奏。「Of Thee I Sing」はただでさえパッとしないメロディに加えて3枚組ボックスのコンプリート盤「The West Coast Sessions」に6テイクくらい入っていてウンザリしたこともあり、好きになれなかった。ところがこのようにオリジナルアルバムで聴くと、けっこういいんですね。 

「A Handful Of Stars」はタイトルのとおりロマンチックな曲。ゲッツがここでもかなりクールに決めているのが、むしろ静かで曲想にマッチしている。

ミディアムテンポの「Love Is Here To Stay」もすごく名演。3連を意識したフレーズ中心に、一般的なFではなくE♭で演奏されている。ちなみにラストテーマでフェルマータしてから再びインテンポになるところが難しく、別テイクはちょっとしくじっています。

5曲目の「Flamingo」以降、がらっと印象が変わる。ここではボブ・ブルックマイヤーを加えたクインテットになります。この「Flamingo」は「Stan Getz At The Shrine」翌日のスタジオ録音の1つ。どおりで名演だと思った。ご存じ、シュライン公会堂でのライブはレコードにするために録音されていたんだけど、あまりの名演でどれも落とせない、でもアルバム換算すると1枚半分くらいしかない、ということで急遽翌日にスタジオで残り半分(レコード片面分)を録音したというエピソードがあります。そこに収録されたのは2曲だったけど、実はもう1曲、この「Flamingo」も録音してたんですね・・・え、「Flamingo」?これは、それこそ前日のライブの1曲目に演奏された曲。いくら2枚組でも、同じレコードに同じ曲をスタジオ盤とライブ盤という違いがあっても入れないだろうから、これは最初から「Stan Getz At The Shrine」に入れる予定がなかったということですね。つまり出来が悪かったから落としたわけではないということ。

そこから続く2曲にはトランペットのトニー・フルセラが参加。この2曲は、やはりフルセラのはっきりしすぎたアーティキュレーションチェット・ベイカー風なプスプス音色が聴きもの。ゲッツは全然わるくないけどついフルセラに耳が行ってしまう。このセッションの数日後に、ゲッツはフルセラと喧嘩して、顔面にパンチを食らわせたというのはけっこう有名な話。

さらに次の2曲は、ジミー・ロウルズ、ボブ・ホワイトロック、マックス・ローチリズムセクションです。このリズムセクションの面々を見て気づく人は気づくはず。はい、録音年月日もメンバーも全く違うのになぜかアメリカ盤の「Stan Getz Plays」にボーナストラックとして収録されている2曲、あれらと同じ日のセッションです。

最後に再びブルックマイヤー入りのクインテットで「Rustic Hop」。ノーマン・グランツが作曲者ブルックマイヤーの意思を無視して勝手に題名を変えてしまったそうですが。ブルックマイヤーの曲はあたりはずれがありますが、これなんかはわりといい曲ですね。 

全体的に散漫な印象を持つ人がいるかもしれないけど、個人的にはかなり好きなアルバム。セッションが多い分、ゲッツのいろんな表情が楽しめる。ジャケットは嫌いですけどねw

スタン・ゲッツ・アンド・ザ・クール・サウンズ

スタン・ゲッツ・アンド・ザ・クール・サウンズ