スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

正規のライブ録音

ゲッツにはブートレグのライブ録音がたくさん残っていますが(ブートレグならヴィレッジヴァンガードでのライブもある)、実際正規のライブ録音はどのくらいあったのか。JATPなどリーダー以外のものは除外して、数えてみます。

まずルーストの1951年「Stan Getz At Storyville」。それからヴァーヴに移り、1954

年「Stan Getz At The Shrine」、1957年「Stan Getz and J.J Johnson At The Opera House」、ボサノヴァで1964年「Getz Au Go Go」こっちは正規と言っていいんですよね・・・「Getz/Gilberto #2」。それからヴァーヴ契約時代だけどなぜかCDはエマーシーから出ている1966年「Stan Getz Quartet In Paris」、そしてこれも正規盤ですよね・・・?1977年「Live At Montmartre」。ここまでで1951年から数えると27年間(両端入れ)、その間で7枚か。多いのか少ないのか。ブートレグはかなり多く残っているけど。

1980年代以降はむしろライブ盤中心か。まず1981年の「The Dolphin」「Spring Is Here」、発表されたフォーマットは違うけど1983年チェット・ベイカーとの共同名義3つ「The Stockholm Concerts 」「Quintessence Vol.1」「Quintessence, Vol. 2」そして、1987年「Anniversary」。姉妹作である「Serenity」はもしかしたらゲッツの死後の発表かもしれない。でも、死後でも1990年の「Final Concert Recording」と1991年の「People Time」は正規盤と言えるから、ありとしよう。あ、そういうことなら死後発表であるもののちゃんとヴァーヴから発表された1961年「Getz At The Gate」も正規盤になるのだろうか。とにかくも、1980年から1991年の12年間では正規のライブ録音が9タイトル。繰り返しますがストックホルムのライブについては当初発表フォーマットが違いますのでどうカウントしていいかわからないところもあるけど。

で、正規盤なら内容がいいかというとそういうわけでなく、いえ言い方が間違っているな、その逆で「ブートレグなら演奏内容がわるいのか」というとそんなことはまったくなく、むしろブートレグの方にもハッとさせられる演奏がたくさん確認できる。ジャズ批評では「ゲッツを嫌い」と公言する某評論家(なぜこの人に執筆依頼したのかわからない)が、「ブートレグの演奏だけは好き」と言っていた。とにかくゲッツの録音はだいたいどれもアタリです。

「ジャズ・クラブ黄金時代」小川隆夫

評論家の小川隆夫氏が1981年から1983年にアメリカ留学していた際の日記を書籍化したもの。音楽関係のみの抜粋なのに600ページ以上の膨大な量です。1日2回のはしごも含めてとんでもない数のライブを聴きに行っていて(726日間の滞在で614回、1.2日に1回ライブに行っている計算)、まだ結婚して数年、昼間は大学院での勉強もあったのにこの人いったい何を考えているんだと思うすさまじいドキュメンタリー。

まあそんなことはこのブログではどうでもよくて、ゲッツ関係の記載があったのでそれをここで紹介します。

まず1981年10月22日、「ファットチューズデイズ」で少し顔を覚えられて、マネージャーに声をかけられたがこれがゲッツの息子のスティーブだったそう。1952年録音「Stan Getz Plays」のジャケットの子どもです。

同じく1981年の11月10日、「ブルーノート」にゲッツが出演予定だったのに当日行ったらキャンセルになっていたとのこと。

1982年2月11日、おっと、ほんの数日前にゲッツが55歳の誕生日を迎えていますね、このときは「ファットチューズデイズ」でライブを聴けたようです。セットリストを見るといくつか音源として残っていない選曲もあります。小川氏が「「Getz/Gilberto」が愛聴盤なんです」と言ったらゲッツは「あれには救われたね」とつぶやいてニヤリと笑ったそうですが、いやいや小川氏、「超」がつくほどのジャズマニアなのにここで「Getz/Gilberto」なんて言ってはダメですよ、ミーハーみたいに思われるw 確かに「Getz/Gilberto」は名盤なんだけどここはかっこつけて別のアルバムを出さないと。本人と話をはずませるためには「「Focus」最高ですね!」というのもいいか。不本意だけど。自分だったら何と言おうか、「「People Time」聴きました!」でしょうか。おっと、まだ1982年には録音されていなかった(1991年録音)。

1982年6月はクール・ジャズ・フェスティバル。6月29日に「フォー・ブラザーズ」と題してゲッツ、ズート・シムズ、アル・コーン、ジミー・ジュフリーの4管演奏。ウディ・ハーマン楽団のメンバーとは違いますが。ここでも知らない曲が演奏されています。クール・ジャズ・フェスティバルはまだ続き、翌30日はレスター・ヤングを偲ぶセッションでゲッツが3曲ほど参加した模様。さらに翌7月1日、セロニアス・モンクのトリビュートですごい組み合わせが実現。ゲッツ、ディジー・ガレスピーマッコイ・タイナー、エディ・ゴメス、シェリー・マンのクインテット。このメンバーで「Trinkle Tinkle」「'Round Midnight」。え、ゲッツが「Trinkle Tinkle」を演奏したの?

1982年12月12日、スティーブから「今度親父のレコーディングを見に来ないか」と言われる。そして1983年1月12日、実際にレコーディングの見学。なんと「Poetry」のレコーディングだったそうです。ゲッツは気難しくなく、ジョークを言ってみんなを和ませていたとのこと。

と、ゲッツ関係の記述はこんなところでした。

ボブ・ブルックマイヤーとの共演

ゲッツのボブ・ブルックマイヤーとの共演については、大きく分けて3つの時期があります。

まず1953~1954年。アルバムでいうと「Interpretations By The Stan Getz Quintet #3」「More West Coast Jazz」や「Live At The Hi-Hat 1953 Vol.1 」「Live At The Hi-Hat 1953 Vol.2」の頃。ゲッツもまだクールで、数年前のプレイに戻ったかのように演奏しています。「Interpretations By The Stan Getz Quintet #3」はあまりパッとしないブルックマイヤーのオリジナル曲のせいで、いいアルバムなのに地味な印象です。同時期なのに「」「Stan Getz At The Shrine」はエモーショナル。それと1954年11月9日の記事でも言った通り「Stan Getz & Cool Sounds」での録音ですね。

続いては1960年代前半。1961年「Stan Getz Bob Brookmeyer Recorded Fall 1961」と1964年「Bob Brookmeyer & Friends」ちょっと間が空きますが、欧州から帰ってきたゲッツとの再共演です。

そして最後は1977~1978年。ゲッツのレギュラーバンドの中でもイマイチな時代、そうアンディ・ラヴァーンがいてラテンパーカッションが常時いたあの時期です。「Jazzbühne Berlin '78 」「Utopia」「Academy Of Jazz」などです。この時期は「Another World」「Poetry In Jazz」などブルックマイヤーなしで同じような音楽を録音していますが、ライブではフロントを増強したんですね。その方が楽しめます。

ブルックマイヤーはいろいろ楽曲を提供してくれるのがおもしろい。「Stan Getz At The Shrine」での曲以外はどれもイマイチだったりはするんだけど、それでも彼のオリジナリティが感じられて聴いていて心地よいです。プレイ自体はモコモコしていて、また、たま~にひどくかっこ悪いフレーズを吹く。聴いていてこちらの方が共感性羞恥。モコモコするのはバルブトロンボーンの特徴なのかな。