スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Jazzbühne Berlin '78

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 70年代末の、アンディ・ラヴァーン時代というと、ゲッツファンにとってはもっともつまらない時期と思うかもしれない。「Utopia」とか「Poetry In Jazz」の路線ですから。いつものようにサイドメンに好き勝手やらせていて失敗した時代。

このアルバム、海賊盤かと思うライブ録音の割には音質がいい。プレイ内容も、ラヴァーン時代の録音ではスタジオ盤「Another World」を除けばこれが一番マシか。いや、選曲も関係してるだろうけど、結構おもしろいかも。ボブ・ブルックマイヤーの参加がいい効果を生んでいる。ブルックマイヤー自身のソロは格好悪いフレーズが多々あるんだけど、やはりこの頃のゲッツのレパートリーが2管になっただけでおもしろくなる。ゲッツ自身はまったく不調ではないし、私はこのアルバム割と気に入っています。やたらと速い「O Grande Amor(Amourと誤記)」なんかも普通にボサノヴァ曲をやっているわけではなくて。でもこのテンポのおかげで、アメリカ人によるボサノヴァ演奏がちゃんと4分の2拍子になっている。ここでのブルックマイヤーが最低レベルにまずいソロをしています。カッコ悪いソロの好例(?)なので、ぜひ聴いてほしいところ。

 「Jet Lag」はなんとなくジェットというタイトルから威勢のいい曲を連想するけどまったく違っていて、なんだかふにゃふにゃした感じ。これ、「時差ボケ」という意味らしいんですね、なら曲想としては合ってるけど、いい曲かと言われるとそうでもない。

 ラストの「Willow Weep For Me」は、名演の誉れ高い「More West Coast Jazz」の雰囲気とはずいぶん違い、倍テンになったりして普通のスイングするジャズになっている。当然こちらもいいですが、「More West Coast Jazz」での深夜のようなムードはない。

 

それはさておき、パーカッションは必要だったのだろうかと思う。「Lester Left Town」での違和感は格別なものがあるけど、やたらとスイングするのがパーカッション参加ゆえというわけではないだろう。40年代にもパーカッション入りのコンボでおかしなことをやっていたゲッツだけど、けっこう「自分さえよければどうでもいい」と思うところがあって、不思議な音楽を作ってしまうことがあると思います。