スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Poetry In Jazz

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ジャズ批評では批判的な評価だけど、そんなに悪くはない・・・と思いたい。ゲッツ自体はこのバンドフォーマットの他のアルバムより良いプレイをしているので。

 

音質はけっこうクリア。ただ、録音バランスが悪すぎて、パーカッションの音が大きいわりにベースが小さく、ゲッツが一発で適当にやっているようにも聴こえてしまうのが難点。というか、パーカッションの音が大きすぎる。それも装飾系のウインドチャイムがやたらと大きいし長く鳴っている。アンコールの2曲なんて、ドラムの音がほぼ聴こえない。私自身ラテン音楽は大好きだけど、コンガやボンゴの音は良くも悪くも能天気なので、この手のジャズに組み入れられるとどうも間抜けな感じになってしまう。

アンディ・ラヴァーンのオリジナル曲はどれもパッとせず、ゲッツがいつになく必死に吹いて盛り上げようとするものの、「誰かさんの書いた元曲がクズなのに、どうすれば名演になるんだよ」状態に近い。おっと言い過ぎですね。でもね、この時代のゲッツが生涯最悪なのは、すべてラヴァーンのせいですよ。「Academy Of Love」なんて、もう駄曲の典型でトーナリティもあるのかないのか、リフもダサく、1960年代後半からのモードによる作曲を勘違いしているとしか思えない。ゲッツがやたらとアグレッシブになるのは曲がダメだからなんとかしようと思っているのだろう。

 

おそらく全員が熱気のある演奏をしているのだろうけど、曲や録音バランスがわるいだけでこうも駄盤になるのだという見本のようなアルバム。「ジャズに名演あって名曲なし」というのはウソです。ここまで駄曲ではゲッツでもどうしようもない。それでもゲッツのプレイがいいので何度も聴いてしまうんですけどね。

 

ところで、演奏内容とはまったく関係ない話を1つ。このアルバムに収録されているミルトン・ナシメントの「Canção Do Sal」はポルトガル語表記だから、けっこう頻繁に「Cancao Do Sol」と記載されることがあるんですね(Salの綴りも間違えられる)。通常のアルファベットではないのだしそもそも言語が違うので、発音は当然英語と一致しない。ちょっと違うけど、原曲の発音は「カンサォン」。ゲッツはボサノヴァ音楽の先駆者ではあったけどブラジルそのものに造詣が深いわけでもなく(ボサノヴァ自体、ブームになって2年でやめて、あとは他のジャズミュージシャンと同程度に取り上げるだけになった)、ポルトガル語の発音がわからないどころか、本来の表記がどうということもわからない。だからMCでこの曲のタイトルを「カンカオ」と発音してるんです。明らかに通常のアルファベットのみの誤表記しか見ていない証拠。ブラジル音楽ファンにとっては怒りを覚えるか、またはあきれて言葉も出ないか。