スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

「summertime」

(ここで言っていることはすべて「私の知る限り」の話なので、間違ってたらすみません)

ガーシュウィンによるスタンダード「Summertime」、ちょっと数えてみたら、このブログを書いている時点でわかるかぎり、ゲッツは6テイクの録音を残しています。動画は追いきれないのでノーカウント。たった6テイク?それも、うち1つは歌伴です。もっと多いと思ってたけど。

もとはオペラの曲ですが、タイトルから受ける印象とは違う暗い曲想で、昔はこの曲どこがいいのかさっぱりわかりませんでした。

さて、ゲッツの演奏でおそらく一番有名なのは1955年「West Coast Jazz」収録のものか。淡々と演奏していて雰囲気はいいです。それよりもテンポをぐっと落としてしっとり演奏しているのが1959年「At Nalen-Live In The Swedish Harlem」での録音。サイズについての打ち合わせができていなかったのか、最初のテーマが終わってヴァンプ的になったところでゲッツが少し様子を見るのがわかります。え、この2テイク、C#マイナーで演奏してる?私はFマイナーでしか演奏したことないですね。

それから大嫌いな1964年「Live In London Vol.2」。こっちはAマイナー。確かにこの曲はいろんなキーで演奏しやすいとは言うけど。うん、このテイクはピアニストがさほど気にならない。ここでの演奏は直前の3月4日にスタジオ録音された「Nobody Else But Me」収録のテイクと似ている雰囲気。リズムセクションが違うからまったく同じではないけど、ゲッツのフレーズも同じものが登場します。このスタジオ録音と、同じくゲイリー・バートン入りカルテットのライブ録音である「Getz Au Go Go」収録テイクは、4ビートではあるものの3連のノリを前面に出しているのが特徴か。個人的には「Getz Au Go Go」でのテイクが特に名演に思えるところ。

最後に、1987年の歌伴が「Swing Street /Barry Manilow」に収録されています。出だしはルバート気味にダイアン・シューアのボーカルにからみ(こっちはCマイナー)、2コーラス目にはバリー・マニロウが入る(こっちはGマイナー)。コーラスの7小節目から8小節目、ゲッツは転調させて同じフィルフレーズを吹くのがかっこいい。歌伴で、ゲッツのソロパートは前奏とエンディングだけだけど、歌のバックでもけっこう吹いていてかっこいい。

正規のライブ録音

ゲッツにはブートレグのライブ録音がたくさん残っていますが(ブートレグならヴィレッジヴァンガードでのライブもある)、実際正規のライブ録音はどのくらいあったのか。JATPなどリーダー以外のものは除外して、数えてみます。

まずルーストの1951年「Stan Getz At Storyville」。それからヴァーヴに移り、1954年「Stan Getz At The Shrine」、1957年「Stan Getz and J.J Johnson At The Opera House」、ボサノヴァで1964年「Getz Au Go Go」こっちは正規と言っていいんですよね・・・「Getz/Gilberto #2」。それからヴァーヴ契約時代だけどなぜかCDはエマーシーから出ている1966年「Stan Getz Quartet In Paris」、そしてこれも正規盤ですよね・・・?1977年「Live At Montmartre」。ここまでで1951年から数えると27年間(両端入れ)、その間で7枚か。多いのか少ないのか。ブートレグはかなり多く残っているけど。

1980年代以降はむしろライブ盤中心か。まず1981年の「The Dolphin」「Spring Is Here」、発表されたフォーマットは違うけど1983年チェット・ベイカーとの共同名義3つ「The Stockholm Concerts 」「Quintessence Vol.1」「Quintessence, Vol. 2」そして、1987年「Anniversary」。姉妹作である「Serenity」はもしかしたらゲッツの死後の発表かもしれない。でも、死後でも1990年の「Final Concert Recording」と1991年の「People Time」は正規盤と言えるから、ありとしよう。あ、そういうことなら死後発表であるもののちゃんとヴァーヴから発表された1961年「Getz At The Gate」も正規盤になるのだろうか。とにかくも、1980年から1991年の12年間では正規のライブ録音が9タイトル。繰り返しますがストックホルムのライブについては当初発表フォーマットが違いますのでどうカウントしていいかわからないところもあるけど。

で、正規盤なら内容がいいかというとそういうわけでなく、いえ言い方が間違っているな、その逆で「ブートレグなら演奏内容がわるいのか」というとそんなことはまったくなく、むしろブートレグの方にもハッとさせられる演奏がたくさん確認できる。ジャズ批評では「ゲッツを嫌い」と公言する某評論家(なぜこの人に執筆依頼したのかわからない)が、「ブートレグの演奏だけは好き」と言っていた。とにかくゲッツの録音はだいたいどれもアタリです。

「ジャズ・クラブ黄金時代」小川隆夫

評論家の小川隆夫氏が1981年から1983年にアメリカ留学していた際の日記を書籍化したもの。音楽関係のみの抜粋なのに600ページ以上の膨大な量です。1日2回のはしごも含めてとんでもない数のライブを聴きに行っていて(726日間の滞在で614回、1.2日に1回ライブに行っている計算)、まだ結婚して数年、昼間は大学院での勉強もあったのにこの人いったい何を考えているんだと思うすさまじいドキュメンタリー。

まあそんなことはこのブログではどうでもよくて、ゲッツ関係の記載があったのでそれをここで紹介します。

まず1981年10月22日、「ファットチューズデイズ」で少し顔を覚えられて、マネージャーに声をかけられたがこれがゲッツの息子のスティーブだったそう。1952年録音「Stan Getz Plays」のジャケットの子どもです。

同じく1981年の11月10日、「ブルーノート」にゲッツが出演予定だったのに当日行ったらキャンセルになっていたとのこと。

1982年2月11日、おっと、ほんの数日前にゲッツが55歳の誕生日を迎えていますね、このときは「ファットチューズデイズ」でライブを聴けたようです。セットリストを見るといくつか音源として残っていない選曲もあります。小川氏が「「Getz/Gilberto」が愛聴盤なんです」と言ったらゲッツは「あれには救われたね」とつぶやいてニヤリと笑ったそうですが、いやいや小川氏、「超」がつくほどのジャズマニアなのにここで「Getz/Gilberto」なんて言ってはダメですよ、ミーハーみたいに思われるw 確かに「Getz/Gilberto」は名盤なんだけどここはかっこつけて別のアルバムを出さないと。本人と話をはずませるためには「「Focus」最高ですね!」というのもいいか。不本意だけど。自分だったら何と言おうか、「「People Time」聴きました!」でしょうか。おっと、まだ1982年には録音されていなかった(1991年録音)。

1982年6月はクール・ジャズ・フェスティバル。6月29日に「フォー・ブラザーズ」と題してゲッツ、ズート・シムズ、アル・コーン、ジミー・ジュフリーの4管演奏。ウディ・ハーマン楽団のメンバーとは違いますが。ここでも知らない曲が演奏されています。クール・ジャズ・フェスティバルはまだ続き、翌30日はレスター・ヤングを偲ぶセッションでゲッツが3曲ほど参加した模様。さらに翌7月1日、セロニアス・モンクのトリビュートですごい組み合わせが実現。ゲッツ、ディジー・ガレスピーマッコイ・タイナー、エディ・ゴメス、シェリー・マンのクインテット。このメンバーで「Trinkle Tinkle」「'Round Midnight」。え、ゲッツが「Trinkle Tinkle」を演奏したの?

1982年12月12日、スティーブから「今度親父のレコーディングを見に来ないか」と言われる。そして1983年1月12日、実際にレコーディングの見学。なんと「Poetry」のレコーディングだったそうです。ゲッツは気難しくなく、ジョークを言ってみんなを和ませていたとのこと。

と、ゲッツ関係の記述はこんなところでした。