スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

North Sea Jazz Festival 1989

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JazztimeのCD-R盤ですが、はい、毎度のごとく良い内容です。2枚組で名演がぎっしり。ジャケットは「Yours And Mine」の流用ですが、内容に免じて気にしないでいただきたいです。ベースが森泰人というとコンコード盤「Soul Eyes」を思い出しますが、はい、メンバーは同じで、あのライブの13日前の録音がこれです(あちらは7月27日録音)。

CD2枚には「Voyage」が2曲、「Just Friends」が2曲。冒頭、「Voyage」と記載されている曲を聴くと、おしい、ケニー・バロンの曲という点では合っていますがこれは「Feijada」です。そうするとダブリが1つ解消されたかなと思っていると、2枚目1曲目の「Voyage」も「Feijada」でした。ちょっとズッコケましたが、演奏内容が抜群によいのでまったく不満なし。ダブリ曲のタイトルが違っていただけ。ちなみに、歌伴でなくインストではアルバム「Voyage」にしか収録されていなかった「Just Friends」が2テイクも入っているのも驚き。当然ながら名演ですし。

さらに「Soul Eyes」にしか収録されていなかったレア選曲「Warm Valley」がまた聴けるのがうれしい。さらに、どのテイクも超絶名演になる「Stella By Starlight」も収録。「Anniversary」の2年後の演奏ですが、あの感動がよみがえる、すばらしい内容。

とにかく、ジャケットの「いかがわしさ」には目をつむって、ぜひ聴いてほしい。

森のベースはいかにも日本人好みのセッティング。この「Yesterdays」でもドシンズシンと響く音色を聴かせてくれます。

 

Tribute To Zoot Sims

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JazztimeのCD-R盤ですが、またまた内容がかなり良いです。ただ、知らない曲が多い・・・1トラック目(1曲目としましょう)のアナウンスに続いて、「Jeepers Creepers」のメロディが引用されるようなきれいな曲は、曲名不明。それに続く曲はゲッツの晩年の愛奏バラード「Falling In Love」。CDには4曲目にそのタイトルが記載されていますが、3曲目です。で、4曲目はこれも曲名不明。つまり、2曲目と4曲目が曲名不明。一方、CDで3曲目に記載されいていた、やたらと長い曲名はこの2曲のうちのいずれかなのでしょうね。「If You Cared For Me Like I Cared For You Then You Wouldn't Cared All」、確かにMCでそう言っているのがわかるけど、本当にタイトルなのか・・・ズート・シムズの主要レパートリーなのかもしれないけど、あいにくズートのことはほとんど知りません。ファンにはわかるのかな。

 

評伝にはこのコンサートについて何も書かれていないけど、企画が誰かは別としてゲッツがメインのステージだったのでしょうね。メンバーはゲッツの当時のカルテットのリズムセクションである、ケニー・バロンにジョージ・ムラーツ、アル・フォスターという豪華な顔ぶれ。バロン以降の録音はピアノもかなり安心して聴けます。途中でフロントのみジェリー・マリガンに交代したり、ハービー・スチュアード、ジミー・ジュフリーの演奏もあるけどここでは割愛。マリガンとゲッツの2管曲があり、おそらくバリトンとの対比でそう印象付けられてしまうだけなんだろうけど、やけにゲッツが活きのいいプレイをしています。まさにハツラツといった感じ。マリガンとのバトルでは若々しさで圧倒的に勝っている。ただ、おそらくマリガンと思われる途中のMCの声は、ゲッツとは比べ物にならないほど若々しい。ゲッツはこの頃すでに闘病生活だったからしょうがないけど。

ラスト、「Four Brothers」はゲッツとマリガン、スチュアードとジュフリーによる4管なんだけど、これがすごい。たった4本でここまでリッチサウンドかつゴージャスになるとは。やはりジュフリーのアレンジが秀逸。彼はプレイヤーとしては大したことなかったけどこういう点ではいい仕事を残している。「Early Autumn」も同じく迫力あるアレンジがたった4人で再現されている。これは聴き物。テナー3本とバリトン1本でここまで華やかになるとはすごいです。

Paris 1979

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Jazztimeの海賊盤CD-R。2枚組です。このシリーズはどれもこれも「期待していなかったらすごい演奏が詰まっていた」という感じ。これだって、ジャケットは「Another World」のものを流用しているし、チャック・ローブがいる時点でまったく期待していなかったのだけど、似たようなメンバーの「Empty Shells」より締まっている。もう少し時代が下ると、ピアノがアンディ・ラヴァーンからミッチェル・フォアマンに代わってさらによくなるしチャック・ローブのコンポーズも良くなっていくんだけど。それでも「Utopia」とかの頃に比べて、ラヴァーンもだいぶよくなりました。特に作曲がかなりマシになしました。

1曲目の「Kali-Au」はパット・メセニー・グループを彷彿させる曲で、ライブよりはスタジオでじっくり取り組めばもっといい演奏になったであろう曲。ほかでもやっていますが、こちらの方が出来がいいと思う。4曲目「Europa」はここでしか聴けません。誰の作曲なのかもわからない。とにかくレアであることは変わりない。

Empty Shells」と重なる曲が多いのだけど、まだこの時期に「Lester Left Town」をやり続けているのが、いかにも過渡期的。これはゲッツにとっても1970年代のレパートリーで、1980年以降は演奏しなくなりますね。一方、60年代からずっと愛奏している「Spring Can Really Hang You Up The Most」がまだ演奏されている。60年代のときよりさらに円熟して、さっぱりしているわりには感動が深い。いえいえ、実は1983年のDVD 「Vintage Getz」でも演奏しているので、かなり長くやっていることになります。一方、ゲッツ以外の演奏は知らないのがまた選曲のおもしろさを感じさせる(私が知らないだけでしょうけど)。

ラストの「Stan's Blues」、時代を追ってきてついにあのメロディの登場です。このライブが1979年11月、それより少し早い「Live At La Spezia Jazz Festival (Italy, July 7, 1979)」はタイトル通り7月のライブ、とにかくあの「Stan's Blues」の登場は1979年からですね。1951年の「Stan Getz At Storyville」での演奏はノーカウントで。1977年、スティープルチェイス盤では同タイトルながら別のメロディでした。

あ、「あのメロディ」とか「別のメロディ」というのが何を言っているのかわからない人は、こちらをご覧ください。「あのメロディ」がBの方です。