スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

「All The Things You Are」

(ここで言っていることはすべて「私の知る限り」の話なので、間違ってたらすみません)

ジェローム・カーンの名曲「All The Things You Are」、ちょっと数えてみたら、このブログを書いている時点でわかるかぎり、ゲッツは10テイクの録音を残しています。

名曲でいろんな名演も残っていますが、ゲッツの演奏はなぜか盛り上がらない不完全燃焼のものが多い。ライブ録音だらけの中、唯一スタジオで録音だけは綺麗な「The Soft Swing」やメンバーはすごいのになぜか盛り上がらない「Complete Live In Stockholm. November 21 1960 /Jazz At The Philharmonic」など。ほかにも録音はたくさんあって、今改めて聴いてみるとどれもフレーズを1つずつ切り取るといい演奏をしているのだけど、なぜか全体的に中途半端な印象をもってしまう。

ちょっと空中分解しそうだけどスリリングなのが「The Song Is You」収録のテイク。1969年という時代もあり、ミロスラフ・ヴィトゥス参加ということもあってフリー気味な演奏はゲッツの録音の中では珍しい。

そんな中で私が一番好きなのが、「West Coast Live/Chet Baker & Stan Getz」での録音です。ここにはなんと「All The Things You Are」が2テイク収録されています。1つ目は1953年、ヘイグでのピアノレスカルテット、これもまたどうも盛り上がらない演奏なのですが(イントロなしでいきなり入るところはすごくかっこいいのだけど)、もう1つ1954年のティファニークラブでの録音(午後に観客なしで録音とのこと)、これが大好きです。こちらはピアノ入り。音質はそんなに良くないしゲッツがよれているようにも聴こえるのですがフレーズがすばらしい。宝石の数々。ゲッツ自身ノっている自覚があったのか、ソロを終えてピアノ、ベース、トランペットのソロのあと、再びソロを取ります。「いやいや、この演奏はダメだし、お前がダメ出ししたテイクは良いぞ」という意見はあるかもしれませんけど。

ところで「All The Things You Are」と言えばチャーリー・パーカーの「Bird Of Paradise」でおなじみの、あのお約束イントロがあります。私はどうしてもあれがズレて聴こえて困るのですが(セッションのときなどはカウントしてくれないとちゃんと入れない)。具体的には、本当は半拍だけ「はみ出ている」のに1拍半「はみ出ている」ように聴こえるんですね。こういう曲、誰でも1つくらいあると思います。

で、ゲッツの10テイクのうち、あのイントロをやっていないもの(イントロなしとか独自のイントロとか)が4テイク、あのイントロが3テイクあり、なんと残りの3テイクは私がズレて聴こえているヴァージョン、つまり1拍半はみ出ているかたちで演奏しているんですよ。音質が悪くて微妙なものもありますが。これは意外。「West Coast Live/Chet Baker & Stan Getz」(2つ目の長い方のテイク)「The Song Is You」「Live In Nice 1978 /Bill Evans Trio & Guests」の3つです。興味あれば確かめてみてください。