(ここで言っていることはすべて「私の知る限り」の話なので、間違ってたらすみません)
スタンダード曲「Lover Man」、ちょっと数えてみたら、このブログを書いている時点でわかるかぎり、ゲッツは8テイクの録音を残しています。ゲッツのアルバムには10テイク収録されていますが、マーシャル・ソラールのトリオ演奏やアルバート・デイリーのソロだったりして、2つはゲッツ不参加です。
この曲、当初チャーリー・パーカーやビリー・ホリデイの録音を聴いて「なんだか暗い曲で好きになれないな」と思っていました。ところが、いい意味で感傷を排してジャズの素材として取り扱っている「Stan Getz At The Shrine」での演奏を聴いて、ジャズ向きでいい曲だなと思えるようになりました。
これは1954年の録音ですが、その後1970年代に入るとゲッツの主要なレパートリーになり、かすれた音色で名演を残すようになります。そして、「The Master」での超名演につながるわけです。1970年代以降の演奏は「Stan Getz At The Shrine」でのものとはまったく趣が違っていますが。
先にも言ったように、この曲はアドリブしやすく、「Autumn Leaves」並みにジャズ向きの曲です。なんとなく漂う暗さは我慢して、トランスクライブすると使えるフレーズがけっこう見つかります。