「またゲッツのフュージョンか」「いまさらゲッツがフュージョンなんて」などと、ジャズ批評では低評価されていたゲッツのフュージョン。何を言うのか、ゲッツのフュージョンは最高でしょう。
ゲッツのフュージョンと言えば何があるか。どこまで含めるか判断が別れそうです。
「Captain Marvel」はチック・コリアがフェンダーローズを弾いているけどジャズじゃないのか。スタンリー・クラークはウッドベースを弾いているし。「Billy Highstreet Samba」や「Empty Shells」はフュージョンと言えるんだけどバンド単位でアコースティックピアノも使っているし。「Another World」もシンセサイザーを使っているけどジャズだし。メンバーはフュージョンの観点から見るとすごい人たちが参加している。チャック・ローブ、ミッチェル・フォアマン、ブライアン・ブロンバーグやマーク・イーガン、ちょっと豪華すぎて退いてしまうw
文句なしにフュージョンと言えるのは「Children Of The World 」「Forest Eyes」「Apasionado」ですね。エレキギターのカッティングやエレキベースのスラップ、そこにゲッツのテナーが乗ってできる音楽は、そこらに転がっているフュージョンとは全然違う、ワンアンドオンリーのサウンド。たまに自称ゲッツのファンで1950年代しか知らないという人がいますが、ゲッツの音楽はクール&ウォームだけではない、彼の幅の広さ、柔軟性を知るには絶対にフュージョンのアルバムも聴くべき。
ゲッツのフュージョンはメンバーも豪華です。「Children Of The World 」はスタンリー・クラーク、エイブラハム・ラボリエル、ポール・ジャクソンが参加してるし全曲ラロ・シフリンのアレンジ(1曲以外シフリンの作曲)。「Apasionado」はオスカル・カストロ・ネヴィスにジェフ・ポーカロ、パウリーニョ・ダ・コスタが参加。
ところで上に挙げたのはリーダー作ばかりですが、サイドマンとしての参加で一番フュージョン度が強いのはどれか。ロックの録音に参加したものもあり意外性のあるサイドマン参加は多いですが、あくまでフュージョンという視点で考えるとやはりスタンリー・クラークの「I Wanna Play For You」がダントツでしょう。1曲だけ参加していますがスタンリーのスラップがバシバシ決まるところにゲッツが普段よりさらに丸みのある音色で絡むという、ゲッツ好きでなければ首をかしげる録音。このいい意味での違和感、ぜひすべてのジャズファンに聴いてもらいたい。