スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Quintessence, Vol. 2 /Stan Getz Quartet With Chet Baker

 f:id:torinko:20201103172049j:plain

Vol.1」と違い、チェット・ベイカーのボーカルが入っていないのが何よりうれしいw

楽曲は、ゲッツとしては30年以上ぶりの「Conception」や、おそらく唯一の録音「It's You Or No One」など(と当初は思っていたら発掘音源が出てきて違うことがわかりました、「Affinity」や「Gtez At The Gate」でもやってました)、珍しい内容となっている。同じように30年ぶりの「We Will Be Together Again」はこの時代の愛奏曲だけど、一番きれいな音色で演奏しているテイクかもしれない。チェット不参加のゲッツのカルテット演奏が2つあり、チェットファンには申し訳ないけどゲッツファンとしてはうれしい。

チェットはレパートリーを変更することを好まず、昔から同じような曲を演奏している。1953年のピアノレスカルテットのときも、ジェリー・マリガン不在なのにもともとアレンジでバリトンサックスのマリガンとの絡みがある曲を選ぶ。今回は「Line For Lyons」なんか選んでいるのがおもしろい。

しかし、ここでの「Airegin」はなんなのだろう。チェットが苦手なのかわからないけど、ピアノソロのあとはゲッツとチェットで2人同時にゆるゆると演奏して、あとはドラムソロで終わり。テンポも遅め。ガクっとくる演奏。これに限らず収録曲はいかにも「Vol.1」の残りという感じではあるけど、絶対的に劣っているものでもなく、80年代以降ゲッツが好きな私にとっては愛聴盤です。ジョージ・ムラーツのスイング感には脱帽。

Quintessence Vol 2

Quintessence Vol 2

 

Quintessence, Vol. 1 /Stan Getz Quartet With Chet Baker

f:id:torinko:20201103172109j:plain

冒頭のアナウンスのあと、ゲッツによる「I'm Old Fashoned」が強烈にカッコいい。ルバートでピアノと一緒に進み、AABAの最後のAでフレーズを繰り返すところなんか最高(ん、この曲はABCAときうべき?)。しかし、そのあとチェット・ベイカーの歌が入ってくる。ここでガクリときます。このままずっとゲッツに吹いていてほしかった。

続く「Just Friends」や「But Not For Me」、ゲッツによるこれらの曲は録音が少なく、チェットとの共演でなければ珍しい演奏ではあるんだけど、チェットのスキャットって不思議ですね。バップ・フレーズを歌うようなスキャットで、一般的なスキャットは全然違う。ボーカル専業の人とはまったく違い、むしろ楽器を演奏しないジャズファンが酔った勢いでシャバダバ歌っているのと何が違うのかと思ってしまう。最初のうちはそこに違和感を覚えてなんだかいやだなと思っていたけど、慣れてしまうとこれはこれで好きになる。

「But Not For Me」は例によって「終われない」w 確かにこの曲、お約束の3回繰り返しもちょっとそぐわないし、私も演奏するときにはエンディングでいつも迷います。

インスト曲は「Star Eyes」「Dizzy Atmosphere」など、チェットが古い曲を好むのが反映されている。不調だと思っていたチェットはわりといいソロを聴かせる。

全体的にゲッツは好調で、歌伴でのソロではインストよりいいフレーズかと思うほど。そしてベースのジョージ・ムラーツのソロも素晴らしい。

 

Quintessence, Vol. 1

Quintessence, Vol. 1

 

West Coast Jazz

f:id:torinko:20201103172006j:plain

ゲッツの最高傑作とする人もいる作品。確かに良い内容で、ジャケットも素晴らしい。ルー・レヴィ、リロイ・ヴィネガー、シェリー・マンのリズムセクションにコンテ・カンドリのトランペットを加えたクインテット編成。

映画「ベニーグッドマン物語」のサントラ録音と撮影のためにハリウッドに来ていたゲッツ。ハリウッドでは午前中に撮影があったので、自由な時間があった夜にセッションを行っていたメンバーで録音されたものがこのアルバム。ゲッツ以外のメンバーは映画サントラには参加してませんが。

いろいろなところでノーマン・グランツのいい加減さを強調するために書かれているように、録音こそ西海岸で行われたもののメンバー全員が東海岸の出身者(まあ、ウエストコーストジャズの代名詞的なジェリー・マリガンチェット・ベイカーも西海岸出身ではないですけど)。選曲もマイルス・デイヴィスの「Four」や「A Night In Tunisia」など東海岸路線あり。また10年後には主要レパートリーとなる「Summertime」の初演も収録されている。

サントラではあっという間に終わることに不満があったということで、ゲッツがあえて取り上げた「S-h-i-n-e」での尽きることないソロはゲッツ生涯の名演の1つであることは間違いない。ただ、ゲッツはワンホーン・カルテットのほうが良い、という意見もあるし、2管編成がわるいわけではないけどコンテ・カンドリはどうかなあ、という意見もある。ミストーンが聴かれるし。もっと言うと、マニアはゲッツのソロこそが重要で、たいていピアノソロもなくていいと思っているw(例外はあるけど)ゲッツのソロが終わったとたんにCDで曲をスキップしたことありませんか?特に70年代以降のバラードで。

CDでは当たり前に追加されている「Split Kick」がオリジナルのレコードには収録されていなかったとは驚き。確かにその他のアルバムで聴かれる同曲や「There Will Never Be Another You」よりは派手なソロではない。でも13度の音を多用してけっこう良いソロなんだけどね。

それから、スタンダードではあるけどB級というかあまり他者が取り上げない、「S-h-i-n-e」「Suddenly It's Spring」などの選曲は、よく考えるとけっこう不思議というかレアというかおもしろいというか。

People Time」で「East Of The Sun」に感動した人には、ここでの同曲にはガックリくるかもしれない。また、「Four」や「A Night In Tunisia」などはゲッツに合わない曲だという人もいるかも。私は、「A Night In Tunisia」はこの曲のアプローチ方法としてすごく参考になるソロだと思います。ブレイクのところをチャーリー・パーカーのように吹かなくてもいいと教えてくれる、名演。

様々な意見があるアルバムではあっても、内容はすごく良い。かなりの傑作です。

 

West Coast Jazz

West Coast Jazz