スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Not So Long Ago

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90年12月のライブの発掘音源。80年以降、死期が近づくにつれてソロが心にせまるようになっている中の、貴重な録音です。

残念なことに発掘ものだけあって音質は良くない。バラード録音ではサーというノイズが顕著。せっかくジョン・パティトゥッチが参加しているのにベースの音量が小さい。ちなみにパティトゥッチとはポップスの歌伴(「Language Of Life /Everything But The Girl」)にて1曲だけ同じく1990年に共演しています。

と、不満はあるけど、ゲッツの演奏は当然良い。50年代のような演奏を求めているわけではないので、「指が速く動かない時期」とか言われても、1曲目「I Love You」を聴くかぎりまったく気にならない。「There Is No Greater Love」も快調にこなす。確かに最後の「'Round About Midnight」は疲れたのか若干ヨレていてあっという間に終わってしまうけど。

びっくりしたのが「Lush Life」。やってることは70年代のほかのテイクと変わらないんだけど、正直「まだこの曲やってたのか」という感想。てっきり「毎度おなじみゲッツの定番ストレイホーン曲」は80年代以降「Blood Count」にチェンジしたと思っていたから。

ここで共演しているフランク・ストラッツェリというピアニストは、ゲッツがこの頃にふと気に入ったピアニストだそうで、本人を自宅に呼んでオリジナル曲の楽譜をもらったとのこと。この12月のライブのときにはいつものケニー・バロンやルー・レヴィがカリフォルニアに来られなかったのでこのストラッツェリを使ったようです。本人いわく、ここに収録されている「So Long Ago」は自分の作品の中でゲッツが一番気に入ったものなのだそうですけど・・・名曲とは言い難いですね。

それにしてもこのアルバムタイトル、ふざけているというか秀逸というか。収録されている「So Long Ago」からとっていますが、「Not」を付けて「そんなに昔というわけじゃない」としています。録音が1990年、発表が2014年。24年経過していますが、ゲッツファンにしてみれば亡くなった90年代はつい最近の出来事。たしかにそんなに昔の話じゃない、そういう意味なのだと思います。

ナット・ソー・ロング・アゴー

ナット・ソー・ロング・アゴー

 

Getz Au Go Go

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数曲ケニー・バレルが参加するも、基本的にはゲイリー・バートン入りカルテットでの演奏。それをバックにアストラッド・ジルベルトが歌っています。

アストラッドの優しいレパートリーは魅力的で、特に原曲のイメージをまったく変えた「It Might As Well Be In Spring」は秀逸。ジャズのバラードを倍テンのボサノヴァにするというパターンはこのあたりから始まったのかもしれない。

タイトル間違い「Eu E Você」はご愛嬌、ゲッツのソロの入り方がかっこいい。ホベルト・メネスカウによる「The Telephone Song」(Telefone)はジャズで演奏するのは珍しい。英語とポルトガル語を混ぜる「One Note Samba」(Samba De Uma Notta Só)など、アストラッドのライブとしても楽しめます。

このラインナップで「Summertime」「Here's That Rainy Day」はどうも合わない、というか浮いているというか。

ほかのライブ盤では普通にソロを回していた「Six-Nix-Pix-Flix」は、ここではメンバー紹介のバックで演奏するだけ。これが当時のバンドのテーマ曲だったということなのでしょう。

ところで「疑似ライブ」疑惑があるこのアルバム、確かにある曲では拍手の入り方が不自然だし、冒頭「Corcovado」だけ誰か不明なピアニストが参加しています。ケニー・バレルとバートンが出たり入ったりしているのに当初発表されていた録音年月日がジャスト8月19日のみだったこともそのような疑惑を呼んだのか。しかし信憑性もあり、1964年はゲッツとアストラッドのツアーが好評でヴァーヴとしてはライブアルバムを作りたかったが音源が不足していたか、さらにはヒットしたこの曲を別で録音してアルバムに収録させることで 売上増を狙ったということも考えられますが、どうなんでしょうね。ライブ録音におけるアストラッドはあまり出来がいいものがないので、ここでの歌唱がそんなに悪くもないことを考えると確かにその疑惑は深まります。

 

Getz Au Go-Go (Reis) (Rstr) (Dig)

Getz Au Go-Go (Reis) (Rstr) (Dig)

 

Swing Street /Barry Manilow

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バリー・マニロウのアルバムで「Summertime」に参加。なんとバリーとダイアン・シューアとのデュエットで、そこにゲッツがからむ。前奏からゲッツがむせび泣き、一番手のダイアンからゲッツがずっとからんでいて、まるでゲッツが主役のよう。バックにいるけど出番は2人分。歌は歌にオブリつけられないからね。

お約束のリフフレーズも交えながら最後までゲッツが二人の歌声とのハーモニーにも参加して、これはもう完全にゲッツをフィーチャーするために録音されたものであると思われます。アレンジはけっこう盛り上げる感じでセンスが良いです。

 

Swing street

Swing street