スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Stan Getz With Guest Artist Laurindo Almeida

f:id:torinko:20201103135806j:plain


ゲッツはボサノヴァといわれるアルバムを短期間に集中して録音した。最初の「Jazz Samba」が1962年、そしてスタジオ録音ではラストになるこのアルバムが1963年。「Getz/Gilberto」の2日後の録音。ライブでは1964年にアストラッド・ジルベルト入りの作品も残しているけど、そのころはすでにゲイリー・バートン入りのやや硬派なバンドを結成していたわけです。ゲッツはボサノヴァの大ヒットのせいで自分のジャズのアイデンティティが埋もれることを恐れていたそうです。

情報の隔絶はわからないこともないけど、スタジオ録音の5枚は考えてみるとおかしな感じ。最初の「Jazz Samba」がボサノヴァでもサンバでもないのは理解できるけど、そのあとにあろうことかボサノヴァをビッグバンドでやるなんていう企画(クリード・テイラーがわるいのか)、それからようやく本国ブラジルのミュージシャンを入れたけど、ルイス・ボンファもマリア・トレードもボサノヴァの人ではなく、今の耳で聴くと違和感が残る。少しだけ参加していたトム・ジョビンは良かったけどね。

そしてようやくジョアン・ジルベルトを入れた名作を録音、これでボサノヴァのエッセンスがわかったのかな~と思っていたら今度は本作。上にも言ったように録音日はジョアンとの録音の2日後だから最初から決まっていたのかもしれないけど、ローリンド・アルメイダもボサノヴァの人じゃないからなあ。パーカッションの人も知らないけど、名前を見るとラテンの人っぽいし、実際聴こえてくる音はボサノヴァじゃないし。

でも選曲は日本人好みでもあり、文句なし。1曲目「Menina Moça」ほぼ「Recardo Bossa Nova」のコード進行に近く、ジャズでもやりやすい。アルメイダの曲として「Winter Moon」「Samba Da Sahra」などが収録されていて、名曲だけどスタンダード化していない分、ここでの録音は貴重。それから、ジョビンの「Outra Vez」はゲッツ節が爆発していて世紀の名演じゃないかなと思える。この曲をチャーリー・バードが演奏したテイクは、アレンジの秀逸さもあり死にたくなるほどけだるいものに仕上がっていましたが・・・

アルバムの裏ジャケットには「Latin Beauty」なんて書いてあって、やっぱりアメリカではラテン音楽扱いだったんだなあと今さらながら思います。

 ちなみにCD追加曲のピアニスト、当初の日本語ライナーでは「ジョビンだと思う」と思い切り間違ったことが書かれていて、ジャズ批評ではスティーブ・キューンと書かれていて、どこかにはボッサトレスのルイス・カルロス・ヴィニャスと書かれていた。ヴィニャスにしてはちょっとおとなしいかなとも思うけど、スティーブ・キューンなのかなあ?

ゲッツ/アルメイダ +1(GETZ/ALMEIDA +1) (MEG-CD)

ゲッツ/アルメイダ +1(GETZ/ALMEIDA +1) (MEG-CD)

 

Montreux Summit Vol. 2

f:id:torinko:20201103135936j:plain

 「Montreux Summit Vol. 1」は2枚組だったけどこちらは1枚。しかし選外曲集というわけではありません。ゲッツは2曲参加。「Red Top」「Night Crawler」の2曲。

「Red Top」はブルーノートを除外したコーラスなどアレンジが美しくかっこいい。ゲッツとデクスター・ゴードンのトレード(ブルースの1コーラス交換)、ウディ・ショウとメイナード・ファーガソンのトレードが聴ける。ゲッツのソロはけっこうワイルドで、非常に新鮮な感じ。そのあとにゴードンが登場するんだけど、単独ソロスペースはなくゲッツのとのトレードのみなんです。もしかしたら編集がされているのかもしれない。だって当時のCBSの2大テナースターでしょ。

Night Crawler」は「Montreux Summit Vol. 1」と合わせてこのシリーズで唯一ゲッツがスイング以外のビートでソロをしているトラック。ビリー・コブハムアルフォンソ・ジョンソンボブ・ジェームスというフュージョンリズムセクションだからやっぱりこういうビートでのゲッツとの共演も聴いてみたいよね。いわゆる一発モノ、1コードの単純な曲なんだけど、よく考えるとゲッツの一発モノは珍しい。いかにもゲッツらしいフレーズが快調で、なんとなくルパン三世の「マグナム・ダンス」に似た雰囲気で、楽しく聴けます。

 

Vol. 2-Montreux Summit

Vol. 2-Montreux Summit

 

Montreux Summit Vol.1

 f:id:torinko:20201103140012j:plain

とにかくすごいメンバー。ビリー・コブハムアルフォンソ・ジョンソンジョージ・デューク(これでコブハム・デューク・プロジェクトのリズムセクション!)ボブ・ジェームス、エリック・ゲイル、スティーブ・カーンにヒューバート・ロウズ、デクスター・ゴードンベニー・ゴルソンなどとゲッツが共演。トランペットにはウディ・ショウとメイナード・ファーガソン。CBSはこういう音源をなかなかCDにしてこなかった。フュージョン勢では売れないと判断されたのだろうか。

フュージョンの大スターによるリズムセクションだけど、基本的には4ビートというのがうれしい。この「Vol.1」はCD2枚組全6曲(というのがすごい)のうちゲッツが4曲参加。「Montreux Summit」「Infant Eyes」「Blues March」「Andromeda」の4曲。

冒頭タイトル曲「Montreux Summit」は大人数による重厚なサウンドが圧倒的で、数あるゲッツのフュージョンの中でも特にフュージョンの魅力にあふれているものではないだろうか。いきなりアグレッシブなソロが登場し、興奮させる。リフやインタルードもかっこいい。ゲッツがコブハムのドラムをバックに、すごくかっこいい演奏を繰り広げる。これはもう、とにかく大名盤。

2曲目「Infant Eyes」はボブ・ジェームスピーター・アースキンが参加。この曲はこの頃のゲッツのお気に入り。もともとこの曲は変に盛り上げずに、最後まで静かに聴かせる曲だからこそ、相当の実力がないとだれてしまう。そこをちゃんと聴かせることができるゲッツはやはりすごい。冒頭、無伴奏ソロによるゲッツの、中~高音域でのサブトーンが綺麗すぎて涙が出そうになる。それから、ピアノソロのあとの、高音によるフレーズで戻ってくるあたり、簡単にフラジオに流れないところがいかにもゲッツ。しかし、1曲目との雰囲気のギャップがすごい。この会場にいたかった。

3曲目「Bluse March」はなんと25分のトラック。コブハムが「Bluse March」ですよ、ブレイキーとの違いにも興味がわきますね。始まってからずっとゲッツが出てこなくて、途中で軽くドラムソロが入るから「もう終わりかな」と思っていると倍テンになり、ロウズのあとにゲッツが登場。いやあ、ここまで長かった。基本的にはコブハムのドラムをフィーチャーしたテイクです。あと、ゲッツとは関係ないけどデクスター・ゴードンがすっかりフュージョンでも通用するようなスタイルになっているのがおもしろい。ところで倍テンになってからのバッキング、ちょっとおかしくないかな?ベースとキーボードでフィールがずれた?フィールのみ倍なのか本当にテンポ倍なのかで合わなくなったのかな?最初の方はフィールのみ倍なのかなと思っているとだんだんわからなくなってくる。ゲッツはかまわず演奏しているけど。

で、ここまでの3曲でCD1枚目が終わる。

 CDでは2枚目、最後の曲「Andromeda」は、某J-POPの曲とは違って曲想は全然ロマンティックではないwいかにもジャズ。最初は8ビート系だけど途中からやっぱり4ビート、デクスター・ゴードンのあとにゲッツが登場。「Havana Jam 2」と同じく、まったく違う2人のテナー奏者を聴き比べられる。これも21分と長尺のトラックだけど、トランペットのバトルやコブハムのソロなど聴きどころは多く、飽きさせない。それにしても、デックスがいつの間にかフュージョンでも通用するようなスタイルになっているのは驚き。

 

2枚組で全6曲、うーん、いかにもジャズって感じでいいですね。ちなみに2枚組で全2曲というものがあったらそれはフリージャズかもしれないので要注意w

 

Vol. 1-Montreux Summit (2CD)

Vol. 1-Montreux Summit (2CD)