スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Aurex Jazz Festival 1981 All Star Jam Session

f:id:torinko:20201103174548j:plain

1981年、オーレックスジャズフェスティバルでのライブ録音。全9曲のうち、ゲッツは「The Girl From Ipanema」と「Bag's Groove」に参加。しかし、嫌気がさしていたイパネマを演奏するなんて、やっぱり1981年以降のゲッツは心を入れ替えているんだなあと思いますw

ジャムセッションというアルバムではありますが、イパネマについてはワンホーンカルテット。ミルト・ジャクソンが参加していることもあり、ゲイリー・バートン時代のゲッツバンドを彷彿させるところもあるけど、レイ・ブラウンアート・ブレイキーというリズムセクションが思い切りボサノヴァらしさを消していて笑えます。エンディングではゲッツが「Funny World」いや、似てるけど「Indian Summer」を引用しています。ちなみにこれは横浜スタジアムでの録音らしいです。

「Bag's Groove」はセッション。こちらは武道館での録音。フレディ・ハバードジェリー・マリガンボブ・ブルックマイヤーの参加もありますが、ブルースでこれだけのメンツなのに短め、全部で7分ないんですね。ゲッツもマリガンもあっという間にソロを終えます。なんなのかな、24時間テレビでおなじみ「閉館時間」の問題だったのかも。

Stan The Man

f:id:torinko:20201103174524j:plain

ヴァーヴによるコンピレーションで、1952年から1961年の音源を集めたもの。LPは2枚組なんですが、3曲だけ、ここでしか聴けないトラックがあるので困るのです。

 

But Beautiful」は1959年のストックホルムでのライブ録音ということらしいけど、拍手は聴こえません。「Evening In Paris」はまさにここでしか聴けない曲。後にも先にもやっていないんじゃないかな。そして「Aregin」はスコット・ラファロを擁したバンドながら、例のラファロ最後の録音より数か月早く、おまけにスタジオ録音という違いがあります。そのためだけにLP2枚を買うのは少しきついですが、とにかくこの3曲の内容がすばらしい。簡単にはあきらめきれない演奏なのです。マニアはつらい・・・

と思っていたら、いつの間にかMP3ダウンロードで曲単位購入ができるようになっていました。あくまでも現時点での話ですが。

 

Stan The Man

 

 

 

 

A Life In Jazz

I f:id:torinko:20201103174215j:plain

ゲッツの評伝。ジャズマンの評伝のどれもがそうであるように、恐ろしく長い。特にこの本は、ゲッツに関わった人に関する記述(要するに本の趣旨からすれば寄り道)が多すぎる気がする。どんどん派生していくのです。たとえばモニカについても、モニカの両親の話になり、モニカの祖父のチャーター機パイロットの話になり、ヒトラーとの関りの話になり、ゲッツとは何の関係もない、ここがなくてもまったく問題ないという感じ。著者はかなりインタビューや情報収集をしてきて、余すところなく文字にしておきたかったのでしょうけど、とにかくそういうのが多い。さすがにこの辺りは読み飛ばしましたw

マニアであれば「こういう録音をした」「この年、○○とセッションして録音が残っている」というのを読んで「ああ、あれね。持っている」と思うのが楽しいでしょう。

で、書かれている演奏の評価については異論がたくさんあります。あれが高評価だったりあれが低評価だったり。また、ゲッツの薬物依存、アルコール中毒と突発的に始まる壮絶なDVにはうんざりするでしょう。私はジャズ聴き始めの頃、チャーリー・パーカーの奇行やチェット・ベイカーの薬物乱用に我慢できず、その音楽までも嫌いになりそうになったこともありますが、今は「それはそれ、これはこれ」と割り切れるようになりました。そうでなかったらこの本を読んで憂鬱になっていたかも。

ゲッツのあまりの酒癖の悪さに、妻のモニカは長い間こっそり薬を飲ませていました。アルコールを摂ると具合が悪くなる、という薬です。ゲッツにはライブ手抜き疑惑がいくつもありますが、もしかして手抜きと言われている公演はその副作用(いや、狙い通りの作用か)で演奏どころではなかったからなのかもしれないな、とこの本を読んで思いました。

 

内容とは関係ないけど、村上春樹の翻訳は「さよならバードランド」でうんざりしているから、やっぱり嫌だった。例えば、

・やはり「彼」「彼ら」を多用するので、訳文が日本語としてこなれていない。これは言語の性質の違いなのだろうけど、意訳してほしかった。

・村上氏はジャズファンなのに、慣用的な表示より英語本来の表示にこだわっているのかな?それでも、マイルスを「マイルズ」、チェットを「チェト」と記載するようなのはいただけない。

・ゲッツが過去を振り返って発言しているときの一人称が「僕」。もう年を重ねたベテランなんだし、ロックミュージシャンではないのだから「私」であるべきだろう。

・それなのにマイルスの発言が「私は」となっているのは、ジャズファンとしては気に入らない。ジャズファンなら「オレは」と、マイルスを不遜に表現すべきでしょw

 

と、翻訳への不満はありますが、マニアなら絶対に読むべき本です。

 

 

スタン・ゲッツ :音楽を生きる

スタン・ゲッツ :音楽を生きる