スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Jazz At The Santa Monica Civic '72

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ノーマン・グランツによるいつものジャムセッションみたいなものなんだけど、CD3枚組でもまったく飽きさせない。特に素晴らしいのがエラ・フィッツジェラルドだけど、今回はゲッツの話だけにしておきます。

ゲッツはJATPオールスターズとしての5曲に参加。グランツのMCによりメンバーが紹介されると観客からは大歓声があがる。この感じからすると、呼ばれてからステージに登場しているのかな。ハリー・エディソンのときの歓声が小さいのが気の毒。逆に、ロイ・エルドリッジでどうしてこんなに喜ぶのか理解不能。同じくテナーで、テキサス系エディ・ロックジョウ・デイヴィスとの共演というのはいいですね。さすがグランツ。リズムセクションカウント・ベイシー、フレディ・グリーンに、レイ・ブラウンエド・シグペンという、ごった煮オールスターズ。

 1972年、このころのゲッツはわがまま放題の時期だと思うので、ソロはほぼ1番手か2番手。大先輩相手に遠慮を知らない。しかし「In A Mellow Tone」なんかやるんだから、セッションというのは意外なゲッツの一面が聴けておもしろいものだなあと思う。ゲッツによるエリントンナンバーは割と少ないし、その中でも「In A Mellow Tone」のようなシリアス系でない曲というのも新鮮。

バラードメドレーはゲッツだけ短いのが気にいらない。みんな3分前後なのに、ゲッツの「Blue And Sentimental」は2分未満なんですよ。

3枚組CD、コンサートは冒頭のカウント・ベイシー楽団やJATPのあとのエラ・フィッツジェラルドのステージを経て、エラとその他の皆さんの共演でフィナーレ。ラストはエラの歌との4小節交換を交えた「C Jam Blues」。スターの技量とエラのエンターテイナーぶりで、こんな曲でも「またブルースか」とは思わずに楽しませる。はっきりいってすごすぎる。しかし、ここでのゲッツはなぜか調子がわるいけど。

CD3枚のうち、ゲッツ参加は1枚強というところだけど、全体的にすごくいいアルバムで、3枚通して聴いてもつかれません。これはかなりお薦めアルバムの1つ。

Jazz at Santa Monica

Jazz at Santa Monica

 

Stan Getz At Large Plus Vol.1,2

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Stan Getz At Large」のセッションで発表されなかった3曲が、2枚に分けて収録されている。昔は入手困難だったのに、今はアマゾンでこんなものが買えます。↓

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私はけっこうな額で2枚別々のものを買ったんですけどね。待てば安く買えたのね。

 

未発表だったのは「The Thrill Is Gone」「Born To Be Blue」「A New Town Is Aa Blue Town」。すばらしい演奏で、どうせだったらオリジナルアルバムの数曲と入れ替えて2枚組バラード集にでもすればよかったのに、と思うくらい。大嫌いな「The Thrill Is Gone」もこれなら聴ける。「Born To Be Blue」は同じ時期の1960年の5月の演奏ではミディアムアップテンポになっているのに、ここではちゃんとスロー。ミディアムの方はほんとにかっこよかったけど、本来はスローの曲なのでしょうから、やはりこちらも名演になっています。

ちなみに、これら3曲は数多く演奏されたわけではありませんが、すべて「Cool Velvet」にストリングス入りのヴァージョンで収録されています。録音は「Cool Velvet」もこの「At Large Plus」も同じ1960年。この頃のレパートリーでした。

 

Stan Getz at Large

Stan Getz at Large

 

Stan Getz At Large

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もともとはヴァーヴ制作の音源ではなく、デンマークコペンハーゲンでの現地主導の録音をヴァーヴで発表したものでしょう。だから「Stan Getz At Large Plus」というアルバムもあるわけです。

 

冒頭の「Night And Day」が始まった瞬間、そうそう、この曲はこのテンポもよく似合う、とうれしくなる。と思いきや、8小節目のコードはなんだ!たまにこのリハモを耳にするけど、ホントにやめてほしい。曲の雰囲気がこれだけでがらっと変わる。晩年のライブではこんなコードではなく原曲に忠実だった。

 

それにしてもこのアルバムの不思議さはなんだろう。いきなり2枚組(レコードのジャケットの表記を見ると、当初発売は別々なの?)、ほとんどミディアムスロー以下、スローもかなり多く、ディスク1のB面なんて3曲連続。それから「I Like To Recognize The Tune」の男声コーラス、何よりゲッツ名義の曲が4つも。ヴァーヴ盤にはそのようにクレジットされている。

でもみなさん、これホントにゲッツの作曲だと思います?聴けるのはこの時期の北欧録音だけでしょ。他人の曲なんじゃないかな。だいいち、まったく作曲をしなかったゲッツがこの時期だけいきなり4曲も、なんて考えられない。私は「Cafe Montmartre Blues」も他人の曲だと思います。50年代や80年代のあれらも同様。

ちなみに他のアルバムには、「Amour」は「Ah-Moore」でアル・コーンの作曲、「Just A Child」はジョニー・マンデルの作曲とクレジットされている。多分それが正しいのだろう。ゲッツの作曲については別項にて考察してみました。

 

とにかくゆったりしていて、ファンは音色をしっかり楽しめるからいいんだけど、特にゲッツを好きではないという人はこのリラックスしすぎたアルバムは途中で飽きるでしょう。これは分けて1枚ずつ発売した方がよかったのかもしれない。買う方は2枚組の方が安いからいいんだけど。

でも、やはりゲッツには北欧の生活が心地よかったのか、演奏内容はよく聴いてみると生涯最高に好調な時期なのではないかと思うほど。先ほど言った男声コーラスがちょっと気になる「I Like To Recognize The Tune」は、ストックフレーズの失敗を含めても「完璧」という言葉がぴったりなソロ構成。ゲッツの録音のうちたった1つだけコピーしろと言われたらこれを選ぶかもしれない(と、現時点では思っています)。

 

ところでいまはこのアルバムのコンプリート盤ということで13曲ほど追加されたものも発売されていますが、「 Stan Getz At Large plus vol.1,2 」と「 In Sweden 1958-60 」と「 Without A Song」を持っていればそれらの追加曲も含めてすべてそろっているので安心してください。

 

アット・ラージ

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