スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

The Best Of Two Worlds

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60年代の共演盤よりパッとしない印象があるかもしれないけど、ポップスとしての完成度はこちらも負けていない。変にストイックなものを求める必要はない。ボサノヴァのスタンダード曲は収録されていないけど、名盤だ。なんとこれがゲッツのコロンビア移籍後第1弾。コロンビアの経営層は、「ゲッツはストレートアヘッドなジャズよりポップス系」と考えていた。まったく意味がないというかわからないけど、参加メンバーにはオスカル・カストロ・ネヴィス、アルバート・デイリー、スティーブ・スワロウ、ビリー・ハート、グラディ・テイト、ルーベンス・バッシーニ、アイアート・モレイラの名前もある。

 

1曲目、いきなり英語詞でエロイーザ・ブアルキ(シコ・ブアルキの姉です)のみの歌、ジョアン・ジルベルト不参加。いい意味で強固な意志を感じる。実はこのアルバム、ゲッツ自身によるプロデュースらしい。ホントかな。評伝には「ジルベルトとの共演をさせられて、ゲッツはコロンビアに不満を持っていた」なんて書いてある。自身のプロデュースなら不満云々はウソ、言い訳ということになる。私は、ゲッツの意思で作ったアルバムだと思う。ジョアンとの共演には何か秘めた意図があったのか、再びの大ヒットを狙ったのか。いずれにしても積極的に音楽を作っているということが伝わってくる。全編にわたり元気のいいソロを聴かせ、3曲目では自身のソロを二重録音。これは何の意図があったのかわからないけど・・・

「自分はボサノヴァを理解している」というアピール評論家や似非ボサノヴァファン、ボサノヴァ以外理解できない多様性音楽ファン初心者は「ゲッツの大仰なブロウがジョアンの音楽を台無しにしている」などと訳知り顔で評論しているアルバムだけど、何を言ってるのか。ゲッツが自分のアルバムを作った、そこにジョアンを参加させた、というものだ。ジョアンの音楽がどうのなんて評価をここに持ち込むのはナンセンスだし、ボサノヴァという物差しで測る必要なんてない。ゲッツのジャズという物差しで測ればいい。

 

選曲は当時のジョアンのレパートリー中心。完全に別々にスタジオ入りして多重録音で仕上げたんでしょうね、ジャケットと裏ジャケットを見ればそれが伝わってくる。まだジョアンは「自分だったら何をやっても称えられる」ということに気づいていないから、おかしな尺の伸び縮みをしていない(「Retrato em Branco e Preto」ではやっていて、聴いていて気持ちが悪い)。翌年のライブ盤ではすでにその兆候がある。

 

それにしても多重録音としてもゲッツの伴奏部分なんかよくやったなあとも思うけど、ギターのカストロ・ネヴィスも参加しているから切り貼りでカストロ・ネヴィスによるギターを付け加えた可能性はあるね。以前ヴィセンテ・アミーゴのライブで、ギタリストが入れ替わっても音だけ聴いてるとけっこう気づかないということを体感したことがあります。

ゲッツ・ジルベルト・アゲイン

ゲッツ・ジルベルト・アゲイン