スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Stan Getz Bob Brookmeyer Recorded Fall 1961

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ボブ・ブルックマイヤーとの録音は、どれもゲッツの音色が良く録れている気がします。このアルバムもユニゾンのメロディからサブトーンがばっちり聴きとれます。テナーとトロンボーンというのは音域からして相性がよく、ゴリゴリハードなジョージ・アダムスのアルバムなどもありますが、ゲッツは想像通りに優しいサウンドを作っています。

1曲目は3拍子のブルックマイヤーのオリジナル。タイトル「Minuet Circa '61」とはどういう意味か。ネットで調べたらイタリア語らしい。ロイ・ヘインズは3拍子でよくやるいつものワンパターン3連符を繰り返してうんざりだけど、ゲッツはライブ盤のときと違いやりづらそうでもなく飄々とソロを展開。

「Who Could Care」はタイトルも曲想も歌曲っぽいのだけど、ブルックマイヤーのオリジナル。ここではゲッツのサブトーンがとにかく素晴らしい。バラード演奏の極致です。レコードではA面のバラードがこれで、B面のバラードがスタンダードの「A Nightingale Sang In Berkeley Square」だったと思われる。後者は、うーん、やはりブルックマイヤーによるパートがなければもっとよかったのに、と思えるくらい2人の演奏の出来具合が対照的。

このほかのブルックマイヤーの曲も佳曲。彼は「Open Country」などけっこう名曲を書きますよね。名曲ゆえか、ゲッツのソロも非常にのびのびとしていて、ラストの「Love Jumped Out」のフレーズ、ストップタイムへの対応など、聴いていていい気持ちになります。

最後まで不自然にエキサイトすることなくリラックスしたアルバム内容。これを良いと思うかつまらないと思うか。

 

 ところでこのアルバム、1曲目以外はロイ・ヘインズのドラムが気にならない。珍しい。ブラシ多様でソフトな感じだからか。

スタン・ゲッツ&ボブ・ブルックマイヤー

スタン・ゲッツ&ボブ・ブルックマイヤー

 

Havana Jam 1

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1979年にキューバで行われたイベント。とんでもなくすごいメンバーが参加していることはここでは触れず、ゲッツの話をします。この「Havana Jam」は「1」と「」があり、こっちは「1」。ゲッツについては、こっちには1曲参加、「」には3曲参加ということになっている。

 

ゲッツはCBSオールスターズ名義で、この「1」の方では1曲参加・・・らしい。「Project  "S"」という、カッコいい曲に参加しているようなんだけど、ソロはなし。CD2枚組でけっこう高かったのに1曲のみ参加で、かつソロなしってどういうこと?ジャケットにはゲッツが写っているでしょ、と怒ってはいけません。マニアはそれでも買うべし。デクスター・ゴードンのソロは聴けるんだし。

とは言うものの、やはりゲッツなしではくやしい。ウェザーリポートやトリオ・オヴ・ドゥームが参加していて救われる。

念のため言っておきますが、「Havana Jam 2」ではゲッツのソロが聴けますので。

 

ハバナ・ジャムI

ハバナ・ジャムI

 

Stan Getz In Stockholm

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間違いなく名盤。メンバーからして、雰囲気も「The Sound」のリユニオンみたいなもの。ただし、アルバム単位で聴くとイマイチ。全8曲のうち4曲がスロー系だからだろう。1曲1曲がどれも最高にすばらしいのに、なんとなく「イマイチ」という印象がある。とはいえ、ジャケットが有名でも長らくCD化されていなかった名盤である。ジャケット写真ではなんとソフトケースを持っている。昔このソフトケースをメーカーか商社かのカタログで見たとき「こんな危険なものを使う人がいるのか」と思ったけど、使っていますね・・・当時の林家こぶ平(現9代目林家正蔵)が、ある本で「このソフトケースがいかにもセッションに行くという感じでかっこいい」というような発言をしており、それも理解不能だったことが思い出される。まあ、ジャケットの話はいいでしょう。

冒頭「Indiana」から快調に飛ばすゲッツ。途中、ベンクト・ハルベルクのソロがタイム感を狂わせておもしろい。2曲目「Without A Song」はピアノによる半コーラスのあとでゲッツが入った瞬間、空気がガラッと変わる。これは聴いた人すべてがそう思うところ。ちなみに「Without A Song」では普通に頭からゲッツが吹いている。聴き比べるのも一興。

「Everything Happens To Me」はピアノソロのあとがかっこいい。このフレーズ、私も真似するときがあります。これは1951~52年にギター入りクインテットで演奏していたころよりぐっとスマートな演奏になっていて、曲の良さを引き出している。そしてバラードが続き「Over The Rainbow」。この曲はAメロもBメロも同じキーのトニックで始まるため、本当に聴かせる力がないとだれてしまうという難曲。実はちゃんと聴かせるのはかなり難しいのです。メロディはきれいだから、その事実に気づかないで演奏してしまうと泣きを見る。「あれ~なんだか盛り上がらないな」と思いながら演奏することになります。当然ゲッツはしっかりまとめて、名演となっている。

続く曲は、この頃の定番「Get Happy」。しかしいつも思うのが「Get Happy」はなぜこういうふうにするのだろうか、ということ。原曲と違ってマイナーにしてますよね。この時期のライブでも同じようにやっているけど、アレンジとしては失敗ですよねえ。

最後の曲は「Jeepers Creepers」。冒頭の「Indiana」もそうだけど、このアルバムはやたらと古い曲を演奏していて、それが欧州のリズムセクション、かつゲッツのサウンドという要素が加わることで、なんとも不思議な、非常に記憶に残るアルバムに仕上がっている。

スタン・ゲッツ・イン・ストックホルム

スタン・ゲッツ・イン・ストックホルム