スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Stan Getz At Large Plus Vol.1,2

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Stan Getz At Large」のセッションで発表されなかった3曲が、2枚に分けて収録されている。昔は入手困難だったのに、今はアマゾンでこんなものが買えます。↓

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私はけっこうな額で2枚別々のものを買ったんですけどね。待てば安く買えたのね。

 

未発表だったのは「The Thrill Is Gone」「Born To Be Blue」「A New Town Is Aa Blue Town」。すばらしい演奏で、どうせだったらオリジナルアルバムの数曲と入れ替えて2枚組バラード集にでもすればよかったのに、と思うくらい。大嫌いな「The Thrill Is Gone」もこれなら聴ける。「Born To Be Blue」は同じ時期の1960年の5月の演奏ではミディアムアップテンポになっているのに、ここではちゃんとスロー。ミディアムの方はほんとにかっこよかったけど、本来はスローの曲なのでしょうから、やはりこちらも名演になっています。

ちなみに、これら3曲は数多く演奏されたわけではありませんが、すべて「Cool Velvet」にストリングス入りのヴァージョンで収録されています。録音は「Cool Velvet」もこの「At Large Plus」も同じ1960年。この頃のレパートリーでした。

 

Stan Getz at Large

Stan Getz at Large

 

Stan Getz At Large

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もともとはヴァーヴ制作の音源ではなく、デンマークコペンハーゲンでの現地主導の録音をヴァーヴで発表したものでしょう。だから「Stan Getz At Large Plus」というアルバムもあるわけです。

 

冒頭の「Night And Day」が始まった瞬間、そうそう、この曲はこのテンポもよく似合う、とうれしくなる。と思いきや、8小節目のコードはなんだ!たまにこのリハモを耳にするけど、ホントにやめてほしい。曲の雰囲気がこれだけでがらっと変わる。晩年のライブではこんなコードではなく原曲に忠実だった。

 

それにしてもこのアルバムの不思議さはなんだろう。いきなり2枚組(レコードのジャケットの表記を見ると、当初発売は別々なの?)、ほとんどミディアムスロー以下、スローもかなり多く、ディスク1のB面なんて3曲連続。それから「I Like To Recognize The Tune」の男声コーラス、何よりゲッツ名義の曲が4つも。ヴァーヴ盤にはそのようにクレジットされている。

でもみなさん、これホントにゲッツの作曲だと思います?聴けるのはこの時期の北欧録音だけでしょ。他人の曲なんじゃないかな。だいいち、まったく作曲をしなかったゲッツがこの時期だけいきなり4曲も、なんて考えられない。私は「Cafe Montmartre Blues」も他人の曲だと思います。50年代や80年代のあれらも同様。

ちなみに他のアルバムには、「Amour」は「Ah-Moore」でアル・コーンの作曲、「Just A Child」はジョニー・マンデルの作曲とクレジットされている。多分それが正しいのだろう。ゲッツの作曲については別項にて考察してみました。

 

とにかくゆったりしていて、ファンは音色をしっかり楽しめるからいいんだけど、特にゲッツを好きではないという人はこのリラックスしすぎたアルバムは途中で飽きるでしょう。これは分けて1枚ずつ発売した方がよかったのかもしれない。買う方は2枚組の方が安いからいいんだけど。

でも、やはりゲッツには北欧の生活が心地よかったのか、演奏内容はよく聴いてみると生涯最高に好調な時期なのではないかと思うほど。先ほど言った男声コーラスがちょっと気になる「I Like To Recognize The Tune」は、ストックフレーズの失敗を含めても「完璧」という言葉がぴったりなソロ構成。ゲッツの録音のうちたった1つだけコピーしろと言われたらこれを選ぶかもしれない(と、現時点では思っています)。

 

ところでいまはこのアルバムのコンプリート盤ということで13曲ほど追加されたものも発売されていますが、「 Stan Getz At Large plus vol.1,2 」と「 In Sweden 1958-60 」と「 Without A Song」を持っていればそれらの追加曲も含めてすべてそろっているので安心してください。

 

アット・ラージ

アット・ラージ

 

Polish Radio Jazz Archives 01

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ホントに、このアルバムが発売されたころは同じく1960年のライブがたくさん発掘されていた。「またか」と思いながらも、どれもこれも抜群の内容。もしかしてゲッツの絶頂期は1960年なんじゃないかと思うほど。

 

このアルバムは曲名を眺めていると「ワルシャワ5」の全貌が明らかになるのでは、と思いきや、「Out Of Nowhere」と「The Folks Who Live On The Hill」は別の日のライブで、ワルシャワからは3曲しか重複していない。聴き比べると全く違います。さすがゲッツ、アプローチが出だしから全然違う。

 

また、珍しく「Daahoud」をやっているのか!と思って聴くと、毎度おなじみの「Jordu」で、がっくり来る。確かに冒頭の上がっていくメロディは似ているけどさあ。レーベル側のすごい勘違いだ。

「All The Things You Are」ではピアノがやけに調子悪い。イントロも拙く、ゲッツが入ってくるくだりはアレンジではなく聴いてられなかったからではないかとも思う。ベースソロのバッキングもハラハラ。とはいえ、全体的には、最初にいったとおりすごく内容が充実している名盤。こういう録音がまだたくさん欧州のラジオ局に眠っているのではないかな。

Polish Radio Jazz Archives 01

Polish Radio Jazz Archives 01