スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Sittin' In

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ノーマン・グランツのテキトーさがよく表れたアルバム。テナー3人のバトルにするのはいいけど、そこにディジー・ガレスピーも追加してしまったから単なる寄せ集めの印象が強くなってしまった。個人的にはガレスピーは好きだからいいけど、当初はレアだったゲッツとの共演もこの頃は食傷気味ですよね。

加えて、バラードメドレー2曲とアップテンポ2曲という、何も考えていないような構成。かなりその場の勢いだけで作ったという感じ。

私はゲッツファンだから当然ゲッツがもっともいいプレイをしていると思うんですけど、我慢できないのがコールマン・ホーキンスアーティキュレーションがめちゃくちゃでタンギングがまともにできていない。アップテンポの曲ではそれもあってふにゃふにゃした演奏になっている。実際ヨレているところもあり、いただけない。

じゃあバラードならいいかというと、長い音符がなくフレーズすべてにブツ切り感、物足りなさが残る。昔はすごかったのかもしれないけどこの頃はとても聴いていられない。ちなみにレスター・ヤングも50年代以降のプレイは情けなくなるものしかない。

アナログB面のバラードメドレーはフツーにミディアムテンポで、まったくバラードじゃないw それもあって、いつものバラードメドレーと違い1人2コーラスも吹いている!

ラストの「The Way You Look Tonight」ではポール・ゴンザルベスが迷子になっている。こういうのをそのまま発表するところがジャズの素晴らしさだけど、私だったら恥ずかしくて録りなおしさせてもらうでしょう。

シッティン・イン

シッティン・イン

 

Cool Mix

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ボブ・ブルックマイヤーとのセッションをいくつか集めたオムニバス。もともとは10インチ盤「 Interpretations By The Stan Getz Quintet 」の1と2で発表されたものなども入っている。

そのあと編集された「Stan Getz '57」も、今でこそ簡単に入手できるものの昔はLPしかなかった。でもここには同アルバムから「Minor Blues」「Pot Luck」が収録されている。

 

このCDのポイントはコンピレーションの「The Complete 1952-1954 Small Group Sessions Vol.1」からの3曲だろう。特に「Cool Mix」はジャズ批評で西條孝之介氏の話にも登場しているので興味深いと思う人も多いはず。

ところがこの「Cool Mix」が全然おもしろくない。Bメロのブリッジがスムーズじゃない気がする。さらに「Erudition」もダメ。ついでにいうと上述「Minor Blues」も駄曲。これらはすべてブルックマイヤーの作曲。普段はいい曲を書く人なのに、どうなってるのかな。曲がわるいとソロもなんとなく乗っていないように思えてくる。西條氏が言うほどにははまらない演奏です。

Cool Mix

Cool Mix

 

Children Of The World

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 極上のフュージョン

というと、絶対に聴きたくないという人とぜひ聴きたいと人が出てくる。とにかくすばらしいアルバム。ただしジャケットのイメージの音楽ではありません。

評伝には、「冴えない出来のラロ・シフリンをバックにつけられてゲッツは不満だった」とあるけど、このアルバム、プロデューサーはゲッツ自身なんですよ。

 

冒頭「Don't Cry For Me Argentina」はミュージカル「エビータ」から。原曲とはちょっと違う感じで、ゲッツがばっちり決める。2曲目以降はすべてラロ・シフリンのオリジナル。アルバム「Reflections」でもアレンジをしたシフリン、このアルバムでもそのときのサウンドがところどころで聴かれる。

「On Rainy Afternoons」はまさに「Reflections」でも聴かれた幻想的なゲッツのバラード。こういう音域でのふんわりとした演奏でゲッツにかなう人はいない。

「You, Me And Spring」はギターのカッティングから入る曲で、後年の「Forest eyes」にも通じる。嫌いな人は嫌いなんだろうなあ。

「Around The Day In Eighty Worlds」はボーっとタイトルを見てると「ああ、80日間世界一周か」と思ってしまうけど、よく見ると単語が入れ替わっています。当然シフリンのオリジナルだからまったく違う曲だし。

パーソネル表記に、ゲッツがサックスのほか「Echoplex」なるものを担当しているとあるけど、これ、単に8曲目9曲目のエコーがかかったサックスのこと。詳しくはゲッツの評伝に記載されています。楽器でなく、機器ですね。ほかにもアルバム「Another World」で使っています。

 

というわけでフュージョン好きにはたまらない、そしてゲッツファンにもたまらない好盤。スタンリー・クラークやエイブラハム・ラボリエルの参加などもうれしい(フュージョン嫌いにとってはスタンリー参加は決定打かw)。ただしこれだけは言わせてもらいたい。タイトルチューンにもなった2曲目、一番どうでもいい曲です。で、タイトルのイメージとはまったく違う曲想。これ、録音が終わった後で国際児童年にあやかって曲名とアルバム名とジャケットを急遽変更しただけだと思うよ。

 

 

チルドレン・オブ・ザ・ワールド(期間生産限定盤)

チルドレン・オブ・ザ・ワールド(期間生産限定盤)