スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Reflections

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このアルバムの録音は1963年10月。すでにボサノヴァをやめて新しいことをやろうとして、まず最初に録音したのがこのアルバムです。これまたかなりの方針転換だ。「Jazz Samba」が1962年2月録音、最後のボサノヴァスタジオ録音「Stan Getz With Guest Artist Laurindo Almeida」の録音が1963年3月。たった2年のボサノヴァイヤーズ。ボサノヴァの音源を録り貯めて小出しで発表していこうとしていたヴァーヴなので、そもそもこの録音をすることには反対だったのだろうけど、ゲッツが強行したのでしょうね。そしてこのすぐあとに、ゲイリー・バートンの入ったレギュラーバンドを結成します。

このアルバムを初めて聴いたときの印象は「すごく優しい音色だなあ」ということ。とにかくゲッツの音色がきれいに録音されている。何度聴いてもいいアルバムだと思う。ゲッツは時代によって音色が変わるけど、少なくともこの時期のゲッツの音色を堪能するにはこのアルバムが一番かもしれない。

クラウス・オガーマンやラロ・シフリンによるアレンジで、弦楽団、管楽団だけでなくコーラス楽団の3つのセッションで構成されている。そう言うと不安になるかもしれないけど、キワモノゲッツ度はまったくない・・・かも。「Sleepin Bee」のコーラスによるテーマは苦笑だけどね。さらにコーラス入りの「Early Autumn」とかも珍しい。

なぜかな、このアルバムには秋のイメージがあって、それが冒頭の「Moonlight In Vermont」にすごく表れていると思う。「Early Autumn」が収録されているからというだけでなく、優しい雰囲気がそう感じさせるのでしょう。

ほかの選曲も良く、きいたことない「Love」は置いといてもシフリンによるタイトル曲「Reflections」(まるでスタンダードの歌モノのような完成度!)やスタンダード「If Ever I Would Leave You」やゲッツお気に入りのバラード「Spring Can Really Hang You Up The Most」のオーケストラヴァージョンなど、かすれた音色も相まって秋の夜長にぴったり。

アルバムのラストを飾るのは、なんとボブ・ディランの「Blowin' In The Wind」。選曲のレア度は高いけど、原曲とはかなり違っている。編成の問題でなく、原曲のコンセプトをまるっきり無視しているというか。でも違和感ないし、さすがゲッツというアプローチです。

 

Reflections (Dig)

Reflections (Dig)