スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Children Of The World

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 極上のフュージョン

というと、絶対に聴きたくないという人とぜひ聴きたいと人が出てくる。とにかくすばらしいアルバム。ただしジャケットのイメージの音楽ではありません。

評伝には、「冴えない出来のラロ・シフリンをバックにつけられてゲッツは不満だった」とあるけど、このアルバム、プロデューサーはゲッツ自身なんですよ。

 

冒頭「Don't Cry For Me Argentina」はミュージカル「エビータ」から。原曲とはちょっと違う感じで、ゲッツがばっちり決める。2曲目以降はすべてラロ・シフリンのオリジナル。アルバム「Reflections」でもアレンジをしたシフリン、このアルバムでもそのときのサウンドがところどころで聴かれる。

「On Rainy Afternoons」はまさに「Reflections」でも聴かれた幻想的なゲッツのバラード。こういう音域でのふんわりとした演奏でゲッツにかなう人はいない。

「You, Me And Spring」はギターのカッティングから入る曲で、後年の「Forest eyes」にも通じる。嫌いな人は嫌いなんだろうなあ。

「Around The Day In Eighty Worlds」はボーっとタイトルを見てると「ああ、80日間世界一周か」と思ってしまうけど、よく見ると単語が入れ替わっています。当然シフリンのオリジナルだからまったく違う曲だし。

パーソネル表記に、ゲッツがサックスのほか「Echoplex」なるものを担当しているとあるけど、これ、単に8曲目9曲目のエコーがかかったサックスのこと。詳しくはゲッツの評伝に記載されています。楽器でなく、機器ですね。ほかにもアルバム「Another World」で使っています。

 

というわけでフュージョン好きにはたまらない、そしてゲッツファンにもたまらない好盤。スタンリー・クラークやエイブラハム・ラボリエルの参加などもうれしい(フュージョン嫌いにとってはスタンリー参加は決定打かw)。ただしこれだけは言わせてもらいたい。タイトルチューンにもなった2曲目、一番どうでもいい曲です。で、タイトルのイメージとはまったく違う曲想。これ、録音が終わった後で国際児童年にあやかって曲名とアルバム名とジャケットを急遽変更しただけだと思うよ。

 

 

チルドレン・オブ・ザ・ワールド(期間生産限定盤)

チルドレン・オブ・ザ・ワールド(期間生産限定盤)

 

Live Jazz From Club 15

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このシリーズでほかにもいろいろあるらしい。アマゾンで探すと同タイトル別ミュージシャンでたくさん出てくる。ラスベガス、トロピカルホテルのブルールームというところでのライブ録音。

ゲッツのこのライブ録音は1966年10月22日とあり、ディスコグラフィーには載っていない。録音年月日データがあるわりにはパーソネルは不明。でも、ヴァイヴはゲイリー・バートンだし、このドラムは明らかにロイ・ヘインズ。ベーシストについては、残されている11月4日や13日の録音ではベーシストがスティーブ・スワロウ、11月6日の録音ではベーシストがチャック・イスラエルズなのでそのどちらかなのではないかと思う。よくわからないけど聴いているとスワロウの方なのかなとも思う。

1曲目「Desafinado」は2コーラス目以降「Chega De Saudade」になり、10分間、最後までそれでいく。それなら曲の表記は「Chega De Saudade」のほうがよかったんじゃないかと思う。ゲッツはわりとエモーショナルな演奏をしている。最後の方の高音など、キンキンするくらい。わるくない。わるいのはドラム。1966年のアメリカではまだこんなものなのか。いや、しかしそれを考慮してもまったくボサノヴァを理解していないテキトーな、そしてうるさすぎるドラムはトム・ジョビンに対しても失礼だろう。ロックでやったほうがまだ確信犯的で許せる。テキトーなところにアクセントを持って来ればいいと思っているのではないか。音量についても無理解、無考え。ドタバタと、よくもまあここまでデタラメにやってボサノヴァでござい、と言えるものだ。

はっ、私は何を言ってるのだろう。これは典型的なロイ・ヘインズの叩き方であり、このいいかげんさはいつものことではないか。最初から期待してはいけないのだ。

 続く「The Shadow Of Your Smile」が意外なスローテンポで、かっこいい。バートンのヴァイヴがいい雰囲気を作り出していて、すごい。でもなんだか正確なビートがつかめないなあと思って聴いていると・・・超スローのワルツなの?うーん、やっぱり4ビートらしいけど、録音状態のせいかドラムもよく聴こえず(いや、聴こえてもダメか?w)、よくわからないまま雰囲気だけで聴かせて終わる。

3曲目「Tonight I Shall Sleep」は前の曲の雰囲気を引っ張りながら、この頃のゲッツ・カルテットおなじみのムードと演奏。バートンのソロが美しい。この曲、この時期のバートン入りのバンドでしか聴けないのは、ゲッツが選んだレパートリーではないからかも。

Live Jazz From Club 15

Live Jazz From Club 15

 

Language Of Life /Everything But The Girl

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ポップスへの客演。「The Road」という曲に参加してます。これがバカにできないくらい良いんですよ。少し切ない曲想にゲッツがからむ。ソロスペースを与えられているわけではないけれど、最初から最後まで適度にからんで、じゅうぶんゲッツを堪能できます。イントロからゲッツがふわあっと登場。アコースティックピアノによるバックにマッチした音色とプレイ。至るところにあるメロディの隙間にゲッツのフレーズがはまっていきます。この曲、ゲッツが参加してなかったらスカスカになっていたと思います。ベースはジョン・パティトゥッチ、ドラムはオマー・ハキムって、すごいね。ディスコグラフィにはトランペットでジェリー・ヘイも参加してると書いてあるけど、それは聴こえないですよね。

ちなみにこのアルバム、曲によってマイケル・ブレッカーも参加している。マイケルファンには有名らしい。スタイルも違う新旧のスターの参加ですが、ゲッツファンなら当然「ふむ、やっぱりゲッツの勝ちだね」と言いましょう。

この1曲だけで「買い」ですよ。

 

Language of Life

Language of Life