スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Complete Savoy Recordings

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1945,年、1946年そして1949年の録音が収録されている。「Teenage Stan」の2枚で聴ける曲も多いけど、こちらは別テイクがたっぷり。

 

冒頭「Opus De Bop」を聴いた瞬間、誰もが「誰だ、お前?」と思う。それほど後年のゲッツらしくない。それもそのはず、この頃のマウスピースはオットーリンクのメタル。ジャケットのイラストのもとになった写真(他のCDのジャケットにも使用されてるけど)のアップが内側に拡大して掲載されている。まあ、ゲッツらしくないのは事実だけど、10代なのにとにかく上手。

「And The Angels Swing」(そして天使はスイングする)というロマンティックな題名の曲が目につくけど、マイナーのどうってことない、どっちかというと暗い駄曲です。「The Benny Goodman Story」にも「And The Angels Sing」という曲が入っていたよね。

 1949年の録音はすでにゲッツの音色に。「Slow」はそんなに遅くない曲。続く「Fast」はイントロが3拍のフレーズで始まるから一瞬「遅い曲じゃん!」と思いきや、すぐにドラムがアップテンポを刻み始めます。

 

Complete Savoy Recordings

Complete Savoy Recordings

 

Early Stan

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テリー・ギブスのセッションとジミー・レイニーのセッションをゲッツでまとめたもの。レイニーの方のセッションでは、当初「スヴェン・クールソン」でクレジットされていたはず。このときレイニーはゲッツの麻薬中毒に嫌気がさして決別宣言をしていました。すでにゲッツのバンドを抜けており、わかる範囲では2人の共演はこれがラストです。

 

レイニーは実はけっこうメカニカルな作風で、1曲目「Motion」など原曲の「You Step Out Of A Dream」の雰囲気をがらっと変えた作曲とプレイ。この人、リーダーセッションだと調子が出るんですよね。レイニーがリーダーのセッション4曲では、ゲッツはかなり安定したプレイをしていて、名盤とされる「Stan Gtez Quartets」なんかより断然いい。それもそのはず、こちらの録音は1953年。CDにはちゃんとそう記載されているけど、ディスコグラフィーの中にはこのアルバムすべて1949年録音とされているものもあるので注意。

レッド・ミッチェルのソロもフィーチャーされているのがうれしい。「Signal」なんて完全にゲッツのリーダーセッション状態、フランク・イソラもこんなに軽快な叩き方ができるのか、と目から鱗です。この4曲はゲッツの全録音の中でもかなりすばらしいものだと思います。

 

それに対してギブスのセッションの方では、完全に「& His Men」状態でソロが短い。よりによってショーティ・ロジャースと同扱いとは・・・でもしっかり個性が確立している時期なので、その短いソロでもじゅうぶん聴きごたえがある。

Early Stan

Early Stan

 

Stan Getz In Denmark

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日本人は、欧州、特に北欧の地理に詳しくないので、ノルウェーのライブもスウェーデンのライブも、ポーランドもスイスもオランダも、そしてこのデンマークのライブ録音も混同してしまいがち。特にゲッツがこの時期北欧に住んでいて、各地でのライブ音源がたくさん発掘されているから、どれがどこのライブかまったく頭に入らない。ついでに言うと、コペンハーゲンとかストックホルムとかオスロとかチューリッヒのライブとか言われてもどの国なのかわからない時期もありました。ゲッツファンはまずコペンハーゲンストックホルムを覚えるんですけどね。


このデンマークの録音ですが、ゲッツの音源の中で2番目か3番目くらいに多くブートとして出回っているのが、冒頭3曲のオスカー・ペティフォードとのセッション。1曲目はペティフォードのソロのみでゲッツの出番はテーマだけなんだけど、ペティフォードがすごすぎて、まったく不満はない。

「 I Remember Clifford」は90年代と相変わらず(いや、逆ですね)同じアプローチ、同じエンディング。こういうのを聴いていると、ワンパターンな自分の演奏にも少し安心できる。

 

レアなトラックもいくつかある。他のブート盤でも聴けるけど、「Cherokee」は手の込んだアレンジが興味深い。しっかりアレンジしているくせに原曲のメロディが出てこないのがおもしろい。ていうか、ゲッツはこの曲相当演奏しているけどまともに原曲メロディを吹いたことがほとんどない。飛ばしすぎず適度なテンポで軽やかに演奏しているので、いつもとアプローチが違って新鮮、すぐ終わってしまうのが残念。

逆に「My Funny Valentine」は珍しくテーマメロディをしっかり吹いているので、原曲の駄曲さがよくわかるw これはマイルス・デイビスみたいにムードだけさらって原曲からできるだけ離れた方がいい曲だと思います。

「Rain」という、知らない曲が入ってるんだけど、スイング時代のようなオーケストラのアレンジがなんだか心地よい。

 

全体的に音質はいかにもエアチェックだけど、そのエアチェックらしさがいい感じを出している。ラストの「Lester Leaps In」ではこの頃お気に入りのストップタイムも聴けます。

個人的にはかなり好きなアルバム。「この頃の欧州ライブ音源って、どれも同じだよなあ」と思っている人がいたら、言わせてください。「どれも同じ」ではありません。同じ音源が重複してるからそう思うのであって、重複を除けば1つ1つどれも違って素晴らしいですよ。ただ、いくつも買ってると、これはあのアルバムにも入っていてこれはそのアルバムにも入っていて、なんてことで、1曲以外すでに持っているということもあるんですよね。

Stan Getz in Denmark

Stan Getz in Denmark