スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Hamp & Getz

f:id:torinko:20201103154144j:plain

この頃頻繁に演奏していた「Cherokee」、普段より少しテンポを落として、とてもリラックスした演奏になっている。あくまでも「少し」だけなんだけど。50年代ということで、ライオネル・ハンプトンのおなじみのうなり声も若若しい。

「Ballad Medley」はピアノやベースに振らず、2曲ずつゲッツとハンプトンが分けているのがうれしい。「Louise」はよくもこんな古い曲を選んだなあという感想だけど、よく考えると二人ともスイングのスターだった人。

しかし、とにかくハンプトンが歌う、歌う。やはり極めつけのエンターテイナー、音楽にもそれがよく表れている。ゲイリー・バートンとの録音でゲッツのヴァイヴとの共演には慣れているつもりでも、全然違うサウンドが飛び出してくる。どちらがいいという話ではなく、やはりプロはそれぞれ個性がすごいということ。

ところで、CD追加2曲に参加しているトロンボーン奏者は誰なんでしょうね。

 

 

Hampton & Getz

Hampton & Getz

 

The Dolphin

f:id:torinko:20201103154109j:plain

私が好きなゲッツのアルバムではベスト3に入ります。

「ゲッツがそれまでのヒット狙いをやめて、原点回帰したアルバム」といわれていて、実際そのとおりだと思う(このあともポップなフュージョンを数枚録音しているけど)。

1曲目の「The Dolphin」の美しさといったら、言葉にできない。「ピアニストがルー・レヴィでなければもっと良かった」といった人もいたけどね。このテイクのほかに、ウディ・ハーマン楽団との演奏や映像作品でも「The Dolphin」を演奏しているけど、やっぱりこれが最高。作曲者ルイス・エサのバージョンは1か所コードが違っていて、こっちのゲッツの方がよりかっこいい曲に仕上がっている。たった1つのコードの有無で、かっこよさが大きく変わる。

2曲目「A Time For Love」もゲッツにしかできない美しさが現れている。この曲、低くすると無粋になるし高くすると情緒がなくなるし、ゲッツじゃないとこのキーでは演奏できない。ゲッツの後年のバラード演奏は、最後にテーマに戻らずにピアノソロがそのままリタルダントして終わるという形式が基本だけど、ここでもそのパターンが聴けます。バラード演奏の形式として、これは参考にすべきものだと思いますね。

それから、このアルバムでしか聴けない「Joy Spring」。クリフォード・ブラウンの名曲ですね。2番目のAメロで半音上がるのがちょっと難しいのだけど、当然ゲッツは難なくプレイ。作曲者クリフォードの演奏よりも名演でしょう。60年代にまったくダメなプレイをしていたベースのモンティ・バドウィックも、ここでは割りとよいベースソロを聴かせる。おお、うまくなったもんだ、と偉そうな感想。

ジョン・コルトレーンの演奏で有名な「The Night Has A Thousand Eyes」は、コルトレーンのようなアフロでなく全編スイング。まずはピアノソロから入り、ゲッツのソロは少しずつ手探りで入っていく。徐々に熱を帯びていくソロ構成がすごい。派手ではないものの名人芸的に多彩さを見せるヴィクター・ルイスのドラムも素晴らしい。ちなみにゲッツはこの曲をストリングス入りでも録音しています。

最後の曲「Close Enough For Love」、日本人好みの曲で、おそらく人気は高いのでしょう。静かに始まりだんだんとエモーショナルになっていく展開もグッド。でもそれまでの5曲に比べればどうでもいい、なんだか受け狙いという感じ。そういえるほど5曲目までが素晴らしいのです。いえ、この曲も良いんですけどね。

 

ザ・ドルフィン

ザ・ドルフィン

 

Stan Getz And The Oscar Peterson Trio

 f:id:torinko:20201103154918j:plain

オスカー・ピーターソンのトリオはエド・シグペン参加以降の方が好きなので、このドラムレストリオとの共演はまったく期待していなかった。ところが、大間違い。とんでもなくスイングするのだ。ゲッツも名フレーズの洪水。生涯のベストの1枚といっても過言ではない。

モカンボ・セッションでもおなじみの「I Want To Be Happy」からぐいぐいと引っ張る、それをピーターソンが受けて飛ばしまくる。好みを別にすれば、これこそゲッツの最高のソロなのではないかな。テンポが速いのによくもこんなフレーズが出てくるものだ。参考になるフレーズがいくつもあります。

ストーリーヴィルで奇跡的名演をした「Pennies From Heaven」も、やや落ち着きながら絶妙なソロをとる。それから、バラードメドレーはゲッツの番が2回あるのがうれしい。おまけに「Bewitched」なんてけっこうレアではないでしょうか。

ゲッツ名義となっている「Tour's End」は、案の定テーマなしで「Sweet Geogia Brown」のコードに基づいて演奏しているだけ。作曲ではないw ラストの「Bronx Blues」もゲッツ作曲となっているけどやっぱりリフはないし、何よりいきなりハーブ・エリスお得意の、どブルースが始まるわけで、これは単にエリス主導でブルースを演奏して、ゲッツ名義でタイトルをつけただけでしょう。その他、スタンダードの「I'm Glad There Is You」や「I Was Doing All Right」など、リラックスして聴ける名演が入っている。

ところでCDでは4曲追加なんだけど、なんとこれがどれも落とせない、レコード収録曲と遜色がないレベル。追加収録されてホントによかった。しかしこれだけの名演、どうせだったら「Stan Getz At The Shrine」のようにもう少し録音して2枚組にすればよかったのに。ドラムレスのリズムセクションはすでにあまり聴かれない時代だったから売れないと思ったのかもしれないし(わからないけど)、実際にやはり少し古臭いとも思うのだけど、これは相当の傑作です。

Stan Getz & the Oscar Peterson Trio

Stan Getz & the Oscar Peterson Trio