(ここで言っていることはすべて「私の知る限り」の話なので、間違ってたらすみません)
スタンダード曲「Body And Soul」、ちょっと数えてみたら、このブログを書いている時点でわかるかぎり、ゲッツは2テイクの録音を残しています。ご存知、1952年「Stan Getz Plays」それから1981年「Billy Highstreet Samba」に収録されています。ちょっと詳しい人だと「え?「The Peacocks」でも演奏してなかったっけ?」というかもしれません。確かにアルバムには収録されていますが、あれはジミー・ロウルズのピアノソロでゲッツは参加していないテイクです。
さて、もうゲッツの「Body And Soul」と言ったら、それだけで涙が出るほどすばらしくて、何も言えません。1952年の方、全1.5コーラス、あまりのフレーズの完璧さに、原曲がどうのこうの、どこを演奏しているとかそういうのは関係なく、トータルであのサイズのゲッツによる新しい曲。ただそれだけ。生涯通して聴ける最低音域のブローも特徴的。クールからウォームなどと言われた時期で、ここからだんだんゲッツの深みも増してくる時期ですが、いい意味で1950年代のクールな、典型的な「オールドジャズ」。聴いているとしっとりと気分が落ち着きます。
そして、1981年の方はチャック・ローブを擁したバンド。こちらはまさにスムースジャズの走り。
ローブと言えばスムースジャズ、このころはまだスパイロ・ジャイラもバリバリのフュージョンをやっていたのでスムースジャズなんてものはなかったわけですが、ここでの演奏は初期のフォープレイを彷彿させる(こっちが先ですけど)、スムースジャズの原型のような「Body And Soul」です。ローブのオクターブ奏法が素晴らしい。そして、ピアノソロのあとにサビからゲッツが戻ってくるところ、ジョン・コルトレーンの「Coltrane Sound」における「Body And Soul」のそれと並ぶ、カッコよさマックスのフレーズです。
このように、ゲッツは生涯2つのテイクを、オールドとコンテンポラリーの2つのスタイルで演奏しています。どちらも必聴。ちなみにどちらもトランスクライブの楽譜が発売されていますが、1981年の方を採譜すると決めた人はすごい。それから1952年の厳密に譜割りがとれないものを採譜した人もすごい。以前日本版の市販トランスクライブを見たら、三連符をさらに三連符で括っていました。