スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

The Peacocks

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このアルバムはサブタイトルとして「Presents Jimmie Rowles」とある。ゲッツがジミー・ロウルズを紹介するという趣旨か。ロウルズはピアノとヴォーカルを担当しているほか、ロウルズの作曲としてアルバムタイトルにもなった「The Peacocks」も収録されている。エリントンナンバーが2曲収録されていて、また、この頃のゲッツはウェイン・ショーターの曲を多く取り上げていたこともありショーターの曲が2曲、さらにはナット・コールも歌っていた古い歌曲もちりばめられてるという、なんとも言えない選曲。このラインナップがロウルズを紹介するのにふさわしいということなのか。プロデューサーはゲッツ本人。

ロウルズのヴォーカルは決していいものではないけど、「The Peacocks」という曲は評価できる。もっとも、作曲者本人によるこのテイクより明らかにビル・エヴァンスとの共演の方が良い。じっくりとした雰囲気のいい曲が多いアルバムではある。

とはいえ、このアルバムはどこまで真剣に、どこまでふざけて作ったのかわからないよね。「Communications '72」を彷彿させるコーラスワークを聴いたときは耳を疑った。最初、これがジャズメッセンジャーズでおなじみの「The Chess Players」だとは気づかなかったよ・・・はっきりいうと、この曲のインパクトが強すぎて、どうしてもこのアルバムの評価は下がってしまうという人はいるかもしれない。キワモノアルバムなのか?と。歌が重なる部分がテーマだけならまだいいのに。そういう意味ではゲッツのトンデモ録音ファンには人気が高いかも。うん、トンデモ度50点あげます。まあ、全体的にはしっとりした感じで、いい雰囲気のアルバムです。「The Chess Players」がなければ相当評価が変わったはず。とかいって、個人的には「The Chess Players」のトンデモ演奏が大好きですけどね。

しかし、なんとこのコーラス隊、よくよくメンバーを見るととんでもないメンバー。ジョン・ヘンドリックス、ミシェル・ヘンドリックス、ジュディ・ヘンドリックス、そしてベヴァリー・ゲッツの名前が!ベヴァリーは、最初の奥さんの方ではなく、娘の方でしょう。ミシェル・ヘンドリックスはご存知のとおり1987年にゲッツが客演したアルバム「Carryin On」を作ります。

上に述べたとおりこの頃のゲッツはウェイン・ショーターの曲を多く取り上げていたと思うけど、ここでも「Lester Left Town」などが聴ける。

エルヴィン・ジョーンズとの共演という点は、そんなに違和感ないです。ヴァーヴのアルバム「Stan Getz & Bill Evans」やボブ・ブルックマイヤーの「Bob Brookmeyer & Friends」ですでに共演しているし。

そうそう、肝心のロウルズとの共演は、実は古くから付き合いがあり、1947年にベニー・グッドマンの臨時バンド、ウディ・ハーマンの臨時バンドで共演したそうで、その後も親交が続いていたようです。1953年にはチェット・ベイカーを加えたクインテットでのピアニストも務めていたようです。