スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

1980年代以降のゲッツ

ゲッツファンならご存じのとおり、ゲッツは1980年代から派手なサウンドやゴージャズな編成から距離を置き、改めてメインストリームのジャズに集中するようになりました。当然その後もフュージョン作品などはありますが、あくまでもジャズミュージシャンとしてのアイデンティティを大切にしたものであり、スターであることに固執したり(悪い意味で)新しいものを求めるようなことから解脱し、ジャズの本来の魅力を追求するような音楽に回帰します。

その頃にがんの告知をされたという話もあり、生活習慣も変わったとか。まずは1981年の「The Dolphin」で、繊細なプレイを聴かせます。そこからソプラノサックスを吹いた「Billy Highstreet Samba」や奇跡のライブ「Anniversary」と「Serenity」、そしてラストレコーディング「People Time」へと、死に近づくにつれて美しさをどんどん増していき究極の美に近づいていきます。

これはまるで、某小説のように死期が近づくほど透明度が増していく、そんな感じなのです。ジャズを俯瞰的に聴く人にとって、ゲッツと言えば50年代の初期なんですが、本当のゲッツの魅力は1980年代以降だと思います。まったく違うプレイスタイルですが、ジャズが提示する最高の美の1つが、この時代のゲッツにあります。