スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

More West Coast Jazz

f:id:torinko:20201103160955j:plain

ボブ・ブルックマイヤーとの2管の編成。1曲目の「Willow Weep for Me」からぐっと引き込まれる。あの曲が名バラードになっている。ほんの少しだけピックアップ的に先行して、テーマにすうっと入っていく。その後は静謐な空間。こんな風に演奏したゲッツは当然すごいけど、これを1曲目に配置したノーマン・グランツはすごい。

続く「Crazy Rhythm」はまさにイマジネーションの泉というべき演奏。尽きないフレーズ、これでもかとスイングする。50年代前半、ゲッツの20代後半におけるアップテンポ曲の演奏はどれも完璧に近い。

「The Nearness Of You」は、ブルックマイヤーがいない方がよかったな。バラードなのになんだかせせこましいし、おそらくブルックマイヤーのアイデアの、おかしなアレンジもあるし。ムードがあるのかないのか、ないです。ゲッツの音色とアプローチはいいのに残念。

「I Didn't Know What Time It Was」はテーマでの2管の絡み方が良い。そう、こういうのはいい。さっきのは曲を台無しにしている部分もあった。ゲッツは3連のノリを交えてプレイ。ただ、ピアノソロやベースゾロも入り、ちょっと時間稼ぎ的に録音された感も否めない。

ラストの「Tangerine」もゴキゲンに展開する。アップテンポで飛ばすと思いきやミディアムファーストで心地よいテンポ。それがまたゲッツのすさまじいほどの名フレーズを引き出している。と、アルバム全5曲で全編上質のゲッツのソロが楽しめる。

上に言ったような例外もあるけど、この頃のボブ・ブルックマイヤーとの録音は基本的にどれも当たりで、内容がすばらしい。ゲッツのとのからみ方も出しゃばり過ぎず、主役を立てている。あくまでもゲッツが主役。トランペットではないのがいいのでしょう。

 

ところでファンの間では有名だけど、このアルバムは「West Coast Jazz」よりも古い録音なんですよね。「More」というわりには共通点もないし。ノーマン・グランツはホントにいつもテキトーだけど、これは西海岸で録音されているから「West Coast」というのだけはウソではなかった。

 

モア・ウェスト・コースト・ジャズ

モア・ウェスト・コースト・ジャズ

 

Complete Savoy Recordings

f:id:torinko:20201103160839j:plain

1945,年、1946年そして1949年の録音が収録されている。「Teenage Stan」の2枚で聴ける曲も多いけど、こちらは別テイクがたっぷり。

 

冒頭「Opus De Bop」を聴いた瞬間、誰もが「誰だ、お前?」と思う。それほど後年のゲッツらしくない。それもそのはず、この頃のマウスピースはオットーリンクのメタル。ジャケットのイラストのもとになった写真(他のCDのジャケットにも使用されてるけど)のアップが内側に拡大して掲載されている。まあ、ゲッツらしくないのは事実だけど、10代なのにとにかく上手。

「And The Angels Swing」(そして天使はスイングする)というロマンティックな題名の曲が目につくけど、マイナーのどうってことない、どっちかというと暗い駄曲です。「The Benny Goodman Story」にも「And The Angels Sing」という曲が入っていたよね。

 1949年の録音はすでにゲッツの音色に。「Slow」はそんなに遅くない曲。続く「Fast」はイントロが3拍のフレーズで始まるから一瞬「遅い曲じゃん!」と思いきや、すぐにドラムがアップテンポを刻み始めます。

 

Complete Savoy Recordings

Complete Savoy Recordings

 

Early Stan

 f:id:torinko:20201103160758j:plain

テリー・ギブスのセッションとジミー・レイニーのセッションをゲッツでまとめたもの。レイニーの方のセッションでは、当初「スヴェン・クールソン」でクレジットされていたはず。このときレイニーはゲッツの麻薬中毒に嫌気がさして決別宣言をしていました。すでにゲッツのバンドを抜けており、わかる範囲では2人の共演はこれがラストです。

 

レイニーは実はけっこうメカニカルな作風で、1曲目「Motion」など原曲の「You Step Out Of A Dream」の雰囲気をがらっと変えた作曲とプレイ。この人、リーダーセッションだと調子が出るんですよね。レイニーがリーダーのセッション4曲では、ゲッツはかなり安定したプレイをしていて、名盤とされる「Stan Gtez Quartets」なんかより断然いい。それもそのはず、こちらの録音は1953年。CDにはちゃんとそう記載されているけど、ディスコグラフィーの中にはこのアルバムすべて1949年録音とされているものもあるので注意。

レッド・ミッチェルのソロもフィーチャーされているのがうれしい。「Signal」なんて完全にゲッツのリーダーセッション状態、フランク・イソラもこんなに軽快な叩き方ができるのか、と目から鱗です。この4曲はゲッツの全録音の中でもかなりすばらしいものだと思います。

 

それに対してギブスのセッションの方では、完全に「& His Men」状態でソロが短い。よりによってショーティ・ロジャースと同扱いとは・・・でもしっかり個性が確立している時期なので、その短いソロでもじゅうぶん聴きごたえがある。

Early Stan

Early Stan