スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

1976年のスタン・ゲッツ

1976年は、ジャズ界においては重要な年です。この年からジャズ(この当時なのでフュージョンが主流)が一気にポップになったと思います。わかりやすいのは1974年の「Jaco」と1976年のジャコ・パストリアスのデビュー盤を比べるとわかります。それからウェザー・リポートの「Heavy Weather」が1977年。フュージョンを聴いているとそれまで多かれ少なかれフリージャズ系の流れだったフュージョンがだいたい1975~1976年くらいからポップになります。「ジャズたるもの、ロックやポップスとは違って難しい顔をして聴く音楽でなければならない!」という感覚から「売れてるというのはいいものだ、いいものをどんどん取り入れていけばいいじゃん」という風に変わるのがそのころなんですね。難しすぎていたウェザー・リポートは1976年に「Black Market」を発表するし、パット・メセニーの「Bright Size Life」も1976年、リターン・トゥ・フォーエバーの「Romantic Warrior」も1976年。

ハービー・ハンコックでいうと、大ヒット作「Head Hunters」そして「Thrust」はすばらしいアルバムながら若干難解さが残っていたところ、1975年の「Man-Child」の「Hang Up Your Hang Ups」は思い切りポップ。アール・クルーの初リーダー作も1976年。ジョージ・ベンソン「Breezin'」も1976年。このあたりに発表されたフュージョンの名盤はどんどん出てくるのでやめますが、さて、この頃のゲッツは何をしていたのか。

1975年はフュージョン時代を反映するかのように、かなり多彩です。

The Best Of Two Worlds」ではジョアン・ジルベルトとの再共演、「The Peacocks」ではジミー・ロウルズとのピアノデュオや不思議なコーラスとの共演、「The Master」や「Boston 1975」でゴリゴリのメインストリームジャズを聴かせ、「This Is My Love」ではエリック・ゲイルと共演してフュージョンタッチの歌伴。

と、1975年はけっこう多彩なのですが、1976年は少し落ち着き、普通のジャズに近い内容となります。「Mad About The Boy」での歌伴、「Moments In Time」「Getz/Gilberto '76」はジョアン・ブラッキーンを入れながらもレギュラーのコンボ、「Jazz Gala Concert」と「40th Anniversary Carnegie Hall Concert」はゲストとしてビッグバンドの客演です。ちょっと反動か。1977年以降はまたおもしろい録音が増えていきますが。