スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

「Yesterdays」

(ここで言っていることはすべて「私の知る限り」の話なので、間違ってたらすみません)

ジェローム・カーンによるスタンダード曲「Yesterdays」、ちょっと数えてみたら、このブログを書いている時点でわかるかぎり、ゲッツは19テイクの録音を残しています。けっこう演奏していますね、うち1つはヘレン・メリルの歌伴です。

ゲッツのレパートリーの中でも、最初期と晩年に演奏していた曲です。ただし、キャリアの中でずっと演奏し続けていたわけではありません。基本的には1952年に録音が集中します。ルーストにおける1950年のおそらく初録音が非常に高く評価されています。

その後、1953年のチェット・ベイカーとのピアノレスカルテットでの演奏がありますが、ここまではしっとりと演奏するスタイルです。しばらくして1960年のJATPでの演奏があり、そこから例外的な1977年の演奏を経て、いよいよ1986年のアルバム「Voyage」に。ここからはどっしりとベースが先導するアレンジになり、1990年まで主要レパートリーとしてこのアレンジで演奏することになります。つまり、リーダーセッション後のキャリア初期にはさんざん演奏していてその後ほとんど演奏しなくなり、59歳60歳くらいから亡くなるまで新しいアレンジで再び演奏するようになったというわけです。

バラードとして演奏するにはどうも湿っぽくてやりにくい曲、すなわち「難曲でもないのになぜかしっくりこない曲」ですが、晩年のアレンジは力強いスイングであり、このアレンジならやりやすいんですよね。私も演奏するときはこちらの、いい意味でムードがないかたちで演奏するようにしています。