スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

「Just Friends」

(ここで言っていることはすべて「私の知る限り」の話なので、間違ってたらすみません)

スタンダード曲「Just Friends」、ちょっと数えてみたら、このブログを書いている時点でわかるかぎり、ゲッツは8テイクの録音を残しています。

当初は6つのテイクのみが知られていました。そのうち3つはチェット・ベイカーとの北欧ライブ。1つはヘレン・メリルの歌伴1つはトニー・ベネットの歌伴。つまり6つのうち5つが歌伴なのです。インストは1つしかありません。その後、海賊盤音源の発掘で2つ追加されて8つとなります。

チェットの歌伴は、とにかく「おもしろい」。1983年2月18日のストックホルム録音(ファーストステージの方。ゲッツ録音の中では初出)は、スタンダードだったからリハをしっかりやらなかったのか、エンディングで全員が「あれ?どうやって終わる?」となり、グダグダ強引に終わらせています。さすがジャズ。また、チェットのスキャットはバップフレーズでむしろ違和感ありあり。スキャットは即ジャズではないということがよくわかります。この曲、私が普段Gメジャーで演奏しているのでそれが「一般的」なのではないかなと思っていますが、ここでは歌伴ということもあってFメジャーでの演奏です。

ヘレン・メリルの歌伴は、アルバムタイトルにもなっています。メリルの歌はそこそこにゲッツが短いながらもかなりノったソロを聴かせてくれます。これも歌伴なのでキーはCメジャー。

当初知られていた唯一のインストテイクはアルバム「Voyage」から。

え?収録されていない?そうなんです、これは、当初発売されたCDにボーナストラックとして収録されていましたが、その後廃盤で「幻の名盤」扱いになり、ながらく入手困難でした。ようやく再発されたと思ったら、なんと「Just Friends」が入っていない、アナログ盤フォーマットのもの。そりゃないよ、と思った人も多かったでしょう。

ここでの「Just Friends」は10分近くのトラックですが、なぜこれが当初発表から落とされたのか納得いかないほどの出来。しかし、よく聴いてみるとゲッツの調子が良すぎて、冒頭からフェイクしまくっているのが一般ウケしないと思われたか。それとも最初からアウトテイク候補で崩していたか。いずれにしろ名演。

で、おもしろいことにこれがFメジャーなんです。え、Gメジャーじゃないの?と思ったんだけど、おそらくチェットの歌伴をしたときからレパートリーに加えた曲なのでしょう、だからチェットのキーにしているのだと思われます。そもそもゲッツが一般とは違うキーで演奏することはさほど珍しくもないですし。

一時期はこれでゲッツの「Just Friends」はすべてと思われていたのですが、JazzTImeによるCDR盤「North Sea Jazz Festival 1989」が発売されて、なんとここに2テイクも入っていたのだから衝撃でした。もっともライブ録音であり、スタジオのインストはアルバム「Voyage」のみですが。

個人的にはこの曲はゲッツにぴったりの曲想だと思います。バンドのレパートリーとしてもっとたくさん演奏していてもおかしくないような曲ですが、それはのこされたテイクがあまりにも名演であり、ゲッツの代表的な録音といいたいほどだからなのかもしれません。しかし、ゲッツの長いキャリアの中で初出が1983年なんですね。晩年のレパートリーなんです。