スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Stan Getz In Warsaw

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このアルバムの前半5曲は、ゲッツの音源の中でももっとも多くのCDで聴けるものの1つといえる。マニアは5曲のタイトルを見ただけで、「あ、1960年のあのライブ音源ね」とわかる。知ってますよね?私は「ワルシャワ5」と名付けているw ちなみにもう1つの「もっとも出回っている音源」は1980年のライブ。

さて、前半の5曲についていえば、ライブというタイトルとは裏腹にラジオ用なのか聴衆の気配はまったく感じられない。で、とんでもない名演。特に「But Not For Me」の8小節あとから入ってくる瞬間などゲッツの生涯の名演奏ベスト10に入るのではないかと思うくらい。少しテンポを落とした「Cherokee」は速すぎない分勢いだけではないしっかりと練られたメロディを紡ぎだし、ストップタイムを多用して飽きさせない仕掛けになっている。全体的にゲッツの音色もきれいに録れている。

後半の1974年ライブはちょっと残念な内容。トム・ジョビンのメドレーは、いくらボサノヴァもどきでもかまわない、と言ってもさすがにオフビートの強調やドラムのテキトーさがひどい。でもこのボサノヴァ最初期の2曲をメドレーにするなんてけっこうセンスがいいし、ゲッツが1970年代に入ってこんな過去のボサノヴァ人気を利用した演奏をすることが意外です。この頃って「Garôta De Ipanema」をリクエストされると怒ったという時代でしょ。

「La Fiesta」は厳しい。チック・コリアのものとは比べものにならないほど曲を理解していないアルバート・デイリーのイントロ、そしてテーマを理解していないベースとドラム。ゲッツは最初はいい感じでソロをスタートするけど後半は無理やり盛り上げて終える。やっぱり乗り切れていない。そしてデイリーのソロ。ジャズのソロというよりラテン音楽のバリエーションと言うべきつまらない打鍵が約5分続く。デイリーはいつもその曲を理解せず単に演奏の素材としてしか扱わないところに欠点がある。

そいうえば昔「バラードの曲想に流されずを単に素材として扱う」ということをほめ言葉として使っている評論家の文章を読んだことがあるけど、曲想を理解して単なる素材にならないようにする方がよっぽど大切だと思うんだけど。

 

Stan Getz In Warsaw

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