スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Diz & Getz

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このアルバムがゲッツとディジー・ガレスピーの初共演らしい。当時は「意外な組み合わせ」と評判になったそうだけど、このあと二人の共演はかなりあります。いずれにせよ、ノーマン・グランツがこのアルバムを企画してくれて本当によかった。絶頂期のガレスピーとスピード感のあるプレイを前面に出していた時期のゲッツの共演ですから。

とにかくすごい勢い。1曲目「It Don't Mean A Thing」を聴くと、「うう、ゲッツ若い!」と思う。ゲッツの演奏の中で最高速の1つ。よく言われる「火の出るような演奏」とはこういうのを言うのだと断言してよい。先行するガレスピーがゲッツに火をつけたのがよくわかる。はつらつとしたプレイ。ゲッツからオスカー・ピーターソンに回り、当然ピーターソンもこういうのは大得意、ドライブ感のあるソロを聴かせる。テーマに戻らないエンディングはアレンジ通りなのか、収拾がつかなくなっのか。

続くエリントンの「I Let a Song Go Out Of My Heart」への展開はかっこいい。1曲目であれだけかっ飛ばしたあとで、ミディアムテンポになるのはすごく落ち着きますね。スローでないのが良い。ソロにおけるゲッツの音色が最高。

4曲目のバラード「It's The Talk Of The Town」は、ガレスピーのソロとゲッツのソロの間にインタルードを挟んで、ノーマン・グランツお得意のバラードメドレー風になっているのが秀逸。このアレンジは誰のアイデアなのか、ムーディーですごく良いですよ。後述の「Siboney」だけでなく、こちらもパート1とパート2に分かれていて、非常にすばらしい。

続く「Impronptu」では、たった2コーラスだけ、存在意義が不明なハーブ・エリスのソロが聴ける。そうそう、リズムセクションはピーターソンのほか、エリス、レイ・ブラウンマックス・ローチ。当時のピーターソンのドラムレストリオにローチを加えたものなのです。はっきり言ってギターはまったくいなくていいんだけど、ノーマン・グランツがここでエリスはいらないとは言えなかったのでしょう。

順調に進んでるのに7曲目「One Alone」を聴くと、ん?このテナー誰?と思う。そう、なぜか1曲ゲッツ不参加で、ゲッツ以外のテナーとのクインテット。スタジオ録音なのに音源が不足したのか。アール・モブレーとあるけど、プレイを聴く限りハンク・モブレーに似ている。

最後の「Siboney」はガレスピーをフィーチャーしたのが「1」、ゲッツをフィーチャーしたのが「2」として2つに分けて収録。と思いきや、「1」では完全カルテットなのに「2」では半分からガレスピーが参加。2人は同格だと思ったのにちょっと不公平。ゲッツのソロを増やせ!といいたいところだけど、この頃はガレスピーの方が人気があったのだろう。ということで、どちらかといえばこれは双頭リーダーというよりはガレスピーのリーダー作かな。ただ、バラードからアップテンポまで、とにかくゲッツの演奏はすばらしい。

 

最近のCDでは追加で1956年10月11日のライブも収録されている。メンバーはゲッツ、ガレスピーのほか、ソニー・スティットリズムセクションはMJQで、うちゲッツ参加は「Groovin' High」「We'll Be Together Again」「Shaw 'Nuff」の3曲。これはメンバーから考えても「For Musicians Only」のボーナス・トラックにする方がふさわしいのかもしれない。だってそっちはフロントの3人とピアノが同じメンバーで1956年10月16日の録音、ほぼ同じセッションでしょ。なぜ1953年のこっちのアルバムに追加収録するのかな。

DIZ & GETZ + 6 BONUS TRACKS

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