スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Jazz Samba Encore!

f:id:torinko:20201103150021j:plain

Jazz Samba」で火がついたボサノヴァブーム、いよいよ本場ブラジルのミュージシャンの参加が実現したわけだけど、ボサノヴァとはなじみがないルイス・ボンファとちょっとこわいwマリア・トレード、そして本当は演奏家というより作曲家のアントニオ・カルロス・ジョビン。人選が当時の情報不足を物語る。

ボンファのギターは明らかにボサノヴァではないけれど、そんなのはチャーリー・バードのときと一緒、ゲッツは颯爽とリズム隊の上に乗り素敵なメロディを繰り出します。

Sambalero」 はボンファがボサノヴァブーム以前に作った、サンバ+ボレロという曲。まったくボサノヴァ風ではありませんが、異国情緒漂う名演になっています。

続いて「Só Danço Samba」、ゲッツはコンサートDメジャーで演奏していますが、このソロの冒頭メロディ、テナーサックス奏者の皆さんはこぞって真似をしたのではないでしょうか。ゲッツに先立つボンファのプレイを聴くと「なんだこれ?」と思うのですが、そりゃあそうです、ジャズミュージシャンでもないギタリストに無理矢理ジャズをやらせようとしてるのですから。ボンファはかなりの技術を持った演奏家ですが、ジャズとはまた別です。

海外で非常に人気を博した「Insensatez」は、ゲッツのソロが歴史的名演。コードに乗ってクリシェを使ったフレーズが印象的です。

ボンファの「Samba De Duas Notas (Two Note Samba)」は・・・そんなにいい曲ではないですねえ。チャーリー・バードの「Three Note Samba」なんてのもありますが、それもコメントできません。

小野リサの歌唱で有名な「Menina flor」はおそらくここが初演、同じ曲とは思えないほどおどろおどろしい仕上がりで驚きますが、ゲッツはさわやかに吹きこなしています。

それでも「Saudade Vem Correndo」などと合わせて、ボンファの作曲家としての才能には本当に驚かされます。考えるとこのアルバムに先立つ「Jazz Samba」はブラジルの楽曲を中心に演奏するもまだジャズスタイルへの強引な転換が見られていましたし、続く「Big Band Bossa Nova」は名盤なんだけど半分以上がゲイリー・マクファーランドの曲でやはりその他のブラジル曲もジャズの味付けが強すぎた。そんな中でいよいよ現地のミュージシャンがいかにもブラジル風のサウンドと楽曲をもって参加してくれたわけです。ま、ボンファの曲はこの時点でボサノヴァ曲ではありませんがブラジルテイストはばっちりです。リアルタイムで聴いていた人は、このアルバムが前2作とはまったく違うことに驚いたでしょう。

ラスト前は「ゲッツに捧ぐ」と邦題がついた「Um abraço no Getz」は、ゲッツがバリバリと吹きまくるテイク。こういう演奏をさせると右に出る者はいない。これは本当に好きなテイクです。ボンファは、よくこのタイトルと曲想で作ってくれました。ゲッツのすごさを表現するにぴったりです。

 

ジャズ・サンバ・アンコール

ジャズ・サンバ・アンコール