スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Didn't We

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ゲッツのオーケストラものとしては有名ではないけれど、内容は素晴らしい。リズムセクションも参加しているけど、ジャズではない。イージーリスニング層を狙った極上のポップス。ほめ言葉ですよ。これはかなり好きなアルバムですね。

はっきりいってなじみのない曲が多いけど、どれも佳曲。「Go Away Little Girl」はなんとキャロル・キングの曲。ボブ・ディランの曲を取り上げたアルバムもあるから人気便乗かと思いきや、よく考えるとまだキングは「Tapestry」でブレイクする前でした。確かにこの頃はバンド「The City」や作曲家として活動していたと思います。ゲッツとはまったく関係ない話ですが。

The Dolphin」で演奏していた「The Night Has A Thousand Eyes」があり、ビル・エヴァンスとの共演「But Beautiful /Stan Getz & Bill Evans」で美しさの極致だった「Emily」、初期の名演とされていた「Stan Getz Quartets」で聴けた「What's New」などがストリングス入りで聴ける。これらの曲のストリングスの路線では新鮮な響き。なんとストリングス入りで「I Remenmber Cliford」までやっている。ちなみにこの曲のエンディングパターンは50年代から、そして90年代まで同じエンディング。ゲッツは気にいったエンディングはずっと使う。

エンディングと言えば名曲「Heartstrings」のエンディングどうにかならなかったのかなあ。これはいただけないというか、まったくムードが壊れる。曲のメロディと全然違うこのエンディング、なぜこれにした?誰のアイデアなんだろう。

アレンジャーのジョニー・ペイト作曲「Try To Understand」は短いポップなコード進行を繰り返してゲッツがその上に乗ってアドリブを繰り広げる。作曲の完成度ではたいしたことはないんだけど、ゲッツが加わることでテイクの完成度は完璧になっている。こういう、繰り返しコードのうえで演奏するというパターンは大好きです。

誉め言葉のつもりかもしれない「オーケストラをバックにしてもゲッツは変わらない」というのは間違い。そんなことはない、オーケストラをバックにすれば演奏も変わります。変わらないのはむしろ二流でしょう。アルバムコンセプトを理解してポップなサウンドに合う演奏をしている、さすがゲッツ。

 

ディドント・ウィ(紙ジャケット仕様)

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