スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

The Benny Goodman Story

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ゲッツが過去に在籍していたベニー・グッドマン・オーケストラ。グッドマンは性格的にはバッドマンだったようで、自分よりスターになっている旧メンバーに対していい気分ではなかったかも。もっとも、「性格的にはバッドマン」はゲッツも同様、意外と気が合ったのかもしれない。

ハリウッドで録音されたこのアルバムは全21曲、うちゲッツ参加は17曲で、そのうちここでは「Bugle Call Rag」「Don't Be That Way」「Slipped Disc」「One O'clock Jump」「Jersey Bounce」「Sometime I'm Happy」と、6曲でゲッツのソロが聴ける。スイングだからソロも短いけど、単なるアンサンブル要員かと期待していなかった私としては想定外だったのでうれしかったです。ちなみにアルバム「West Coast Jazz」で名演を聴かせた「Shine」は、ゲッツのソロがないどころかグッドマンがばーっと吹いて、1分もせずに終わる。ゲッツ自身が「映画のために撮影されたものはほとんど捨てられる」ということで、あえてここでやった曲をそのままハリウッドで録音したのが、あの「West Coast Jazz」です。

不思議なことにゲッツの音色が50年代前半のサウンドに聴こえる。わざわざなのかたまたまなのか、または気のせいなのかわからないけど、このときはブリルハートのマウスピースだったのかなと思う。

ところで注意事項を2つ。まず、同じジャケットでも20曲しか入っていないものがあります。輸入盤で、よく見ると英語で「CDの時間の関係でオリジナルから1曲カットしました」などと書いてある!よりによってそのカットされた曲は、ゲッツのソロが聴ける「Sometime I'm Happy」なんですよ。ふざけています。それからもう1つ、「ベニーグッドマン物語」という同タイトル別ジャケットの、ゲッツが参加していないアルバムもあるので注意。このジャケットを探しましょう。

 

The Benny Goodman Story

The Benny Goodman Story

 

Jazzbühne Berlin '78

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 70年代末の、アンディ・ラヴァーン時代というと、ゲッツファンにとってはもっともつまらない時期と思うかもしれない。「Utopia」とか「Poetry In Jazz」の路線ですから。いつものようにサイドメンに好き勝手やらせていて失敗した時代。

このアルバム、海賊盤かと思うライブ録音の割には音質がいい。プレイ内容も、ラヴァーン時代の録音ではスタジオ盤「Another World」を除けばこれが一番マシか。いや、選曲も関係してるだろうけど、結構おもしろいかも。ボブ・ブルックマイヤーの参加がいい効果を生んでいる。ブルックマイヤー自身のソロは格好悪いフレーズが多々あるんだけど、やはりこの頃のゲッツのレパートリーが2管になっただけでおもしろくなる。ゲッツ自身はまったく不調ではないし、私はこのアルバム割と気に入っています。やたらと速い「O Grande Amor(Amourと誤記)」なんかも普通にボサノヴァ曲をやっているわけではなくて。でもこのテンポのおかげで、アメリカ人によるボサノヴァ演奏がちゃんと4分の2拍子になっている。ここでのブルックマイヤーが最低レベルにまずいソロをしています。カッコ悪いソロの好例(?)なので、ぜひ聴いてほしいところ。

 「Jet Lag」はなんとなくジェットというタイトルから威勢のいい曲を連想するけどまったく違っていて、なんだかふにゃふにゃした感じ。これ、「時差ボケ」という意味らしいんですね、なら曲想としては合ってるけど、いい曲かと言われるとそうでもない。

 ラストの「Willow Weep For Me」は、名演の誉れ高い「More West Coast Jazz」の雰囲気とはずいぶん違い、倍テンになったりして普通のスイングするジャズになっている。当然こちらもいいですが、「More West Coast Jazz」での深夜のようなムードはない。

 

それはさておき、パーカッションは必要だったのだろうかと思う。「Lester Left Town」での違和感は格別なものがあるけど、やたらとスイングするのがパーカッション参加ゆえというわけではないだろう。40年代にもパーカッション入りのコンボでおかしなことをやっていたゲッツだけど、けっこう「自分さえよければどうでもいい」と思うところがあって、不思議な音楽を作ってしまうことがあると思います。

 

 

Stan Getz/Cal Tjader Sextet

とっても好きなアルバム。まったくサンバでない「Ginza Samba」の疾走感、それから美しすぎる「I've Grown Accustomed To Her Face」、ストックフレーズかと思うほどのソロメロディが聴ける「Liz Anne」など聴きどころは満載。他にも「For All We Know」などゲッツが引き立つ曲が並び、ブルースも軽快で心地よい。強いて言うならカラーが変わってしまうギターの参加は不要だったかな。
転調を交えた「I've Grown Accustomed To Her Face」、カル・ジェイダーのテーマに続くゲッツのソロの入り方が良い。ギターが入ってアンニュイな雰囲気がまた曲想に合うような合わないような、とにかくゲッツのソロが引き立つ。
このアルバムはスコット・ラファロが参加していることでも有名。ゲッツとラファロの共演はこのほかにもいくつか残っているけど、1958年録音のこのアルバムでは、ラファロはたいしたことをしていません。ちなみにこのCDがファンタジーのOJCシリーズで発売されたとき、記載された録音年が誤って1963年となっていました。それじゃラファロが死んだあとだから、録音年が間違っているのかパーソネルが間違っているのか、と悩んだものです。
ところで、このアルバムは今でこそディスコグラフィやカタログなどで「Stan Getz with Cal Tjader Sextet」というタイトルがつけられていますが、ジャケットを見ると「Cal Tjader Sextet/Stan Getz」となっており、これが正しい。当時、ゲッツはヴァーヴと契約しており、ジェイダーはファンタジーと契約していました。このアルバムはファンタジー盤なので、このアルバムは本来ジェイダーのリーダー作にゲッツが客演したというかたちでなければいけないわけです。

 

Stan Getz/Cal Tjader Sextet

Stan Getz/Cal Tjader Sextet