アマゾンのレビューでは一連の西海岸セッションの頂点という記載もあるけど、どうなんだろう。ゲッツは落ち着き払って名演をする、すべての曲をあまりにも余裕しゃくしゃくで演奏するので、「この曲ってこんなに簡単な曲だったっけ」と勘違いするほど。しかし、如何せん選曲がわるい。
1曲目「Where Or When」はサイズが32小節でないだけでなくメロディも進行もよくない。全然乗れないんです。続く「Woody 'N You」はゲッツの十八番で、おそらく初めてのスタジオ録音。これはもう名フレーズのオンパレード。ところが3曲目「Smiles」が、AABAでもABACでもない、わかりづらい曲で、かつまたテーマメロディが全然良くない。なんでこの曲を?
ラストの「This Can't Be Love」はストレスを発散するかのように、延々とゲッツがソロを展開する。この曲、演奏しやすい分わりと自分勝手な単調なプレイになりがちなんだけど、ゲッツはそんなことはないね。
CDでは別テイク群のほかに「All God's Chillun Got Rhythm」や「But Beautiful」が追加収録されていて、この時代のゲッツらしい演奏をしている。
「But Beautiful」については、60年代、70年代と違ったアプローチを見せるので聴き比べが楽しい。
一連の西海岸セッションを聴いて、とにかく思うのが「ルー・レヴィはヘタクソ」ということかな。80年代になるとけっこうマシになっているんだけど、50年代での録音は「使える音を出しているだけ」という感じで、フレーズとしてのまとまりもなくゲッツのソロが終わった瞬間止めたくなってくる。