スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

More West Coast Jazz

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ボブ・ブルックマイヤーとの2管の編成。1曲目の「Willow Weep for Me」からぐっと引き込まれる。あの曲が名バラードになっている。ほんの少しだけピックアップ的に先行して、テーマにすうっと入っていく。その後は静謐な空間。こんな風に演奏したゲッツは当然すごいけど、これを1曲目に配置したノーマン・グランツはすごい。

続く「Crazy Rhythm」はまさにイマジネーションの泉というべき演奏。尽きないフレーズ、これでもかとスイングする。50年代前半、ゲッツの20代後半におけるアップテンポ曲の演奏はどれも完璧に近い。

「The Nearness Of You」は、ブルックマイヤーがいない方がよかったな。バラードなのになんだかせせこましいし、おそらくブルックマイヤーのアイデアの、おかしなアレンジもあるし。ムードがあるのかないのか、ないです。ゲッツの音色とアプローチはいいのに残念。

「I Didn't Know What Time It Was」はテーマでの2管の絡み方が良い。そう、こういうのはいい。さっきのは曲を台無しにしている部分もあった。ゲッツは3連のノリを交えてプレイ。ただ、ピアノソロやベースゾロも入り、ちょっと時間稼ぎ的に録音された感も否めない。

ラストの「Tangerine」もゴキゲンに展開する。アップテンポで飛ばすと思いきやミディアムファーストで心地よいテンポ。それがまたゲッツのすさまじいほどの名フレーズを引き出している。と、アルバム全5曲で全編上質のゲッツのソロが楽しめる。

上に言ったような例外もあるけど、この頃のボブ・ブルックマイヤーとの録音は基本的にどれも当たりで、内容がすばらしい。ゲッツのとのからみ方も出しゃばり過ぎず、主役を立てている。あくまでもゲッツが主役。トランペットではないのがいいのでしょう。

 

ところでファンの間では有名だけど、このアルバムは「West Coast Jazz」よりも古い録音なんですよね。「More」というわりには共通点もないし。ノーマン・グランツはホントにいつもテキトーだけど、これは西海岸で録音されているから「West Coast」というのだけはウソではなかった。

 

モア・ウェスト・コースト・ジャズ

モア・ウェスト・コースト・ジャズ