極上のフュージョン。
というと、絶対に聴きたくないという人とぜひ聴きたいと人が出てくる。とにかくすばらしいアルバム。ただしジャケットのイメージの音楽ではありません。
評伝には、「冴えない出来のラロ・シフリンをバックにつけられてゲッツは不満だった」とあるけど、このアルバム、プロデューサーはゲッツ自身なんですよ。
冒頭「Don't Cry For Me Argentina」はミュージカル「エビータ」から。原曲とはちょっと違う感じで、ゲッツがばっちり決める。2曲目以降はすべてラロ・シフリンのオリジナル。アルバム「Reflections」でもアレンジをしたシフリン、このアルバムでもそのときのサウンドがところどころで聴かれる。
「On Rainy Afternoons」はまさに「Reflections」でも聴かれた幻想的なゲッツのバラード。こういう音域でのふんわりとした演奏でゲッツにかなう人はいない。
「You, Me And Spring」はギターのカッティングから入る曲で、後年の「Forest eyes」にも通じる。嫌いな人は嫌いなんだろうなあ。
「Around The Day In Eighty Worlds」はボーっとタイトルを見てると「ああ、80日間世界一周か」と思ってしまうけど、よく見ると単語が入れ替わっています。当然シフリンのオリジナルだからまったく違う曲だし。
パーソネル表記に、ゲッツがサックスのほか「Echoplex」なるものを担当しているとあるけど、これ、単に8曲目9曲目のエコーがかかったサックスのこと。詳しくはゲッツの評伝に記載されています。楽器でなく、機器ですね。ほかにもアルバム「Another World」で使っています。
というわけでフュージョン好きにはたまらない、そしてゲッツファンにもたまらない好盤。スタンリー・クラークやエイブラハム・ラボリエルの参加などもうれしい(フュージョン嫌いにとってはスタンリー参加は決定打かw)。ただしこれだけは言わせてもらいたい。タイトルチューンにもなった2曲目、一番どうでもいい曲です。で、タイトルのイメージとはまったく違う曲想。これ、録音が終わった後で国際児童年にあやかって曲名とアルバム名とジャケットを急遽変更しただけだと思うよ。