スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Getz/Gilberto #2

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このアルバムほど不思議・意味不明なものも珍しい。ゲッツとジルベルトといいながら、実はオリジナルフォーマットでは共演曲はなし。ゲッツはすでにゲイリー・バートン入りカルテット、ジョアン・ジルベルトは自身のトリオで演奏。当時このアルバムを買った人はだまされたと思っただろうな。当時のオリジナルライナーにゲッツのことしか書いていないのもなんだか笑える。「この日のコンサートチケットは売り切れ」とか書いていて、聴衆も期待していたでしょうに、ライブが始まって最初は面食らったのだと思われる。

Getz/Gilberto」が発表された1964年(録音は1963年)なのにレパートリーはもうすっかりボサノヴァ卒業後のもので、「Grandfather's Walz」から始まる。録音バランスが少し悪いかな。ゲッツ自身は1961年から1963年の3年間だけでボサノヴァから身を退いている。それでも今でもボサノヴァの帝王と言えばゲッツと返ってくるのだから、いかに売れたかが推測できる。

2曲目「Tonight I Shall Sleep With A Smile On My Face」は、ここでしか聴けないかも。と思っていたら、「Stan Getz And Guests Live At Newport 1964」にも収録されていました。あとは「Stan's Blues」「Here's That Rainy Day」が続き、おそらく聴衆はいよいよおかしい、ジョアンはどうした、と思い始めたでしょうね。ゲッツカルテットの演奏は確かにすばらしい、文句はない、しかしボサノヴァではないしジョアンもいない。その後にジョアンが自身のグループで登場し、ゲッツは引っ込むわけで、キツネにつままれたような感じ。オリジナルアルバムはそれで終わりです。コンサートに行った人だけでなくこのレコードを買った人も怒り狂ったかもね。ゲッツマニア以外は。

幸い、CD化再発で未発表曲が5曲追加され、初めてアストラッド・ジルベルトも含めた共演録音が発表されました。ある意味ようやくタイトルに偽りなしになったと言えるけど、やはり発表したくなくなるような内容。「Getz Au Go Go」でも歌っていた「It Might As Well Be Spring」や「Only Trust Your Heart」など選曲は良いのだけど、アストラッドも調子が悪く(というか、スタジオ以外で調子がよいアストラッドは少ない)もったいない。「Garôta De Ipanema」も披露され、ようやく聴衆にも納得してもらえたところ、ジョアンはラストナンバー「Você É Eu」で最後に尺を間違えて(ボサノヴァ曲としてはこれで正しいのかも。むしろ私もこの曲はジョアンのサイズで演奏します。ジャズはソロとりやすいように変えたりするから)、それでもゲッツもそれに合わせようとせずジョアンも合わせようとせず、半コーラスの間カオスになるものの、途中でジョアンが合わせます。2人の意地の張り合いみたい。私たちアマチュアだとお互いに相手に合わせようとして、同じようにカオスがつづくところですw

そういう意味ですごく貴重、ゲッツファンにはたまらない記録です。

 

ゲッツ/ジルベルト#2+5

ゲッツ/ジルベルト#2+5