スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Stan Getz Quartets

f:id:torinko:20201103150210j:plain

初期ゲッツの美意識が凝縮されたアルバム。最低音が印象的な「There 's A Small Hotel」など余裕しゃくしゃくなベテランっぽい演奏が多いけど、実はまだゲッツは20代前半、よく聴いてみると若さであふれていて、「I’ve Got You Under My Skin」では手癖フレーズが連発される。それでも「What's New?」で聴かれるイマジネーションはほとんど奇跡的かもしれない。この枯れた味わい、20代の若者がどうして出せるんだろう?まったく信じられませんね。初期のゲッツのバラードは哀愁を感じさせてくれるから好き。

それからやはり「Long Island Sound」。そのときのゲッツのプレイを言い表したタイトルです。調子に乗って吹きまくるゲッツ。こういう、何の制約もなく吹きまくるというのがまたいいですね。

「Crazy Chords」はブルースをどんどん転調していって12キーで演奏するという荒業。よくもこんなことを考えたものだと感心します。ジョン・コルトレーンも普通なら避けるキーでブルースを吹き込んでいたけど、それよりは一般のリスナーに対するインパクトは大きいよね。

後年まったく違うアレンジで演奏される「You Stepped Out Of A Dream」とかも、このクールなバンドでの演奏は新鮮でいいです。ほかにもスタンダード中心に選曲がなされており、「古き良き」ジャズの時代を聴かせてくれます。いろんな人がこれをゲッツのベストアルバムとしていますね。

 うん、ホントに傑作なのですが、このアルバムこそゲッツの最高傑作だという意見には同調しません。まだまだ未完成なところだらけ、そこがこのアルバムの魅力でもあるんだけど、そういうアルバムを最高傑作なんていってしまうと、そのあとのゲッツの歩みすべてを否定することになってしまう。ゲッツというよりこの時代の空気が伝わってくる、全体的なアルバムの雰囲気で「最高傑作」なんていってしまってるんじゃないかなあ。テクニックでは50年代後半のほうがすごいし、フレーズのすばらしさでは80年代後半のほうが絶対にすぐれていると思う。確かに、全体的な雰囲気というのは大切ですが。けっこう、「ゲッツはこの時代が最高」と言っている人は1950年代前半の録音しか聴いておらず、1980年代以降のゲッツを聴かせると「え、これゲッツなの?」と驚く。

ところで、私が持っている盤だけでしょうか、OJCシリーズの輸入盤CDに入っている「My Old Flame」と「The Lady In Red」の別テイクは、両方とも本テイクとまったく同じ演奏です。少しだけ長さが違い、どちらも本テイクと同時に再生すると最後には1秒ほどずれます。裏面には「1960年の10インチLPで世に出た別テイク」とありますが、それを持っていないんですよ。CD制作時のミスなのかそもそも別テイクということが勘違いだったのか。同時期の「What's New?」の別テイクはちゃんと別の演奏なんだけどな。

 

スタン・ゲッツ・カルテッツ+5

スタン・ゲッツ・カルテッツ+5