1951年から1952年までの録音を収めたこちら「Vol.2」は、「Vol.1」と比べるとゲッツがすでに力強い演奏になっていて、すでにそれまでのスタイルから脱却していることがわかります。変化しているというより、もともとちょっと無理していわゆる「クール」と評された演奏をしていたのではないかという気がします。ただ、その「クール」と言われるスタイルを追求したおかげで、もともとのゲッツの持つ個性とうまくブレンドして、独特の柔らかい、弱々しくもなくハードすぎることもないこのプレイが形成されたのかなと思います。1990年代の演奏と比べるとまったく違うように感じる人も多いと思いますが、けっこう根底にあるものは変わっていません。
さてこのアルバム、前半3分の2はピアノがホレス・シルバー。なんと「Split Kick」の初演が聴けます。アート・ブレイキーの演奏と比べるとはとても同じ曲には聴こえない・・・
リチャード・ロジャース作「It Might As Well Be Spring」はもともと名曲だけど、ゲッツにかかるとさらに味わいが引き出される。60年代のボサノヴァ・ヴァージョンもわるくないけどね。
「Lullaby Of Birdland」は別テイクが発掘されましたね。やっぱり当初発表されたほうがいい出来だけど。それから「These Foolish Things」は、この録音(12月19日)の10日後に、ヴァーヴでさらに録音され、それは「Stan Getz Plays」に収録されます。
そして注目すべきは「Autumn Leaves」。ハードバップ以降の単にこの曲を素材としてしか捉えていない演奏に毒されたひとはムーディにバラードとして演奏されるこのテイクを「陳腐」と評するけど、本来この曲はここでの演奏のよう にしっとりとやるもの。私はすごく好きです。マイルス・デイヴィスもミディアムスローで演奏しているし、アップテンポで演奏するようになるのはビル・エヴァンス・トリオ以降じゃないのかな。ただゲッツは、ここでも、そして91年のラストレコーディングでも、GマイナーでなくCマイナーで演奏するん ですよね。いろんなスタンダード曲のお約束のキーはマイルスの録音で決まったというけど、マイルスの録音に先立つこと約8年、このころはCマイ ナーが普通だったのかな。
最後の12月19日の音源は、マスターテープの関係なのか、私の持っているCDでは全体的な音程がちょっとずれていて、トランスクライブには若干不向きかも。「Lullaby Of Birdland」なんて超名演なのに、テープスピードのせいで微妙に音程がずれていて音をとりづらい・・・
- アーティスト: スタン・ゲッツ,ジミー・レイニー,ホレス・シルヴァー,デューク・ジョーダン,ジョー・キャロウェイ,レナード・ガスキン,ビル・クロウ,ウォルター・ボーデン,ロイ・ヘインズ,フランク・アイソラ
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2011/12/21
- メディア: CD
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