スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

But Beautiful /Stan Getz & Bill Evans

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1970年代のビル・エヴァンスは美の極致。そこにゲッツが加わるのだからわるいわけがない。このアルバムはベルギーでのライブ録音。マスターが行方不明になったのか権利関係かわからないけど、ライブから18年後にようやく陽の目を見ました。こんなに素晴らしい内容なのに。

1曲目「Grandfather's Waltz」はこの2人のスタジオ録音でおなじみの曲。早速のリリカル合戦には、1970年代になってからようやく本人曰く「何をやっていいかわからなかった」という状態から抜け出したエディ・ゴメスも参加資格あり。やや弾きすぎ感はあるものの、いいサポートをします。一方ドラムスのマーティ・モレルは1969年まではこんなプレイだったっけ?トニー・ウイリアムスの真似みたいな叩き方は他のメンバーの中で浮いている。ちなみにエヴァンスのソロの終わりあたりで拍手が起こるのは、おそらく自分のソロが終わってステージから消えていたゲッツが戻ってきたからかと推測します。

2曲目「Stan's Blues」はエヴァンスは参加していない。ゲッツがソロを終えたと思いきやすぐに再開するあたり、聴いていて謎ですが、どうやらエヴァンスが「やりたくない」といっていたのにゲッツがむりやりブルースを始めたからへそを曲げた結果らしいね。たぶん途中でエヴァンスにソロを回そうとしたのに拒否されたから再び吹いたのじゃないかな。

「Emily」はエヴァンスの愛奏曲だけど、ゲッツと相性がよく最初から美しい世界が提示されます。そもそもアルバム「Didn't We」でもオーケストラをバックに録音しているので初めてではないし。エンディングもかっこよく和音が進行。ゲッツの録音って、エンディングのコード進行がカッコいいものが多い。

この二人のスタジオ盤ではゲッツの手癖フレーズが少し耳障りだった「Funkallero」も、ここではすっきり仕上がっており名演となっています。16小節の一見簡単そうな曲ですが、実際プレイしてみると少しクセがあります。

そして「The Peacoks」はとにかく名演。当然初演であろうジミー・ロウルズとのアルバムなんか比べ物にならない。作曲者に対して申し訳ないんだけど。ゲッツとエヴァンスがデュオで、あの静かな曲をしっとりと聴かせます。このライブの場にいたら動けなくなっただろうと思わせる、そういう演奏。のちにエヴァンスの愛奏曲となるわけですが、ここでのステージを気に入ったのではないかな。

続く「You And The Night And The Music」の前に「Happy Birthday」を演奏しているのが美しくて良いんだけど、「The Peacoks」が終わったところのMC「Happy Birthday、Bill!」とうまくつながらないのは、実際のライブと収録の曲順を変えているからなのかな?

情けないことに、このアルバムは最初好きではなかった。スタジオ盤の「Stan Getz & Bill Evans」がグダグダな印象があって、そのせいか思い込みもあり、アルバムの良さがわからなかったのだが、いまは愛聴盤で、迷ったときはこれを選ぶほど。いまではスタジオ盤の方も同じくらい好きで、やはりエヴァンスのすばらしさにもよるのだと思う。

But Beautiful
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