ゲッツは歌伴といて2曲参加している。まず「I'm Just Foolin' Myself」、まずピアノのイントロがかっこいい。そして1980年代ゲッツ特有の落ち着いたクリアな音色と歌い回しで、しっかり伴奏をする。GRPだけあって、録音も良くゲッツが素晴らしく聴こえる。小粋でしゃれたサウンドは、この1980年代~90年代のコンテンポラリージャズ特有の雰囲気。それもそのはず、キーボードとピアノにはデイブ&ドン・グルーシンが参加してます。
そしてなんと、もう1曲はビリー・ジョエルの「New York State Of Mind」。この曲、一時期いろんなジャズボーカリストが歌っていて食傷気味になったんだけど、やはりゲッツの演奏は素晴らしい。ギターを入れた、ジャズというよりポップスのバックバンドで、当然こちらもキーボード類はグルーシン兄弟。まあGRPだから当然か。歌が終わってからゲッツが堂々と登場。ジャズもポップス系もうまい。フュージョンサックスのように「泣き」でないとこの手のサウンドには合わない、と勘違いしている人は多いのではないか。そんな人はここでのゲッツを聴けば考えが変わるんじゃないかな。
ところで「ゲッツは歌伴がうまい」というひとは、実は1960年代のアストラッド・ジルベルトの伴奏くらいしか聴いたことがなかったりする。ましてや1980年代の歌伴を知らない人は多い。そもそもベテランのジャズファンの中でも「ゲッツはクール時代とボサノヴァ時代を少々聴いたことがあるだけ」という人は珍しくない。1980年代以降がまたいいんですけどね。ゲッツはダイアン・シューアのアルバムにはけっこう参加しているけど、評伝にシューアのデビューを応援していたことが書かれています。