スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Getz/Gilberto

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誰かがいっていたように、このアルバムを低く評価するボサノヴァファンはえボサノヴァファン、このアルバムを低く評価する音楽ファンは視野の狭い素人。かっこつけようとする人ほどこのアルバムを悪くいう。「私はわかっている」といわんばかりに。

 ジョアン・ジルベルトの繊細な音楽にゲッツの天才的なメロディが加わり、「ボサノヴァとしてどうか」という次元を超えて、1つの「ミュージック」として素晴らしいものができた、というアルバムです。確かに事実として、歌やギター、ピアノよりサックスの音量が大きいけど、それがどうしたの?と言いたいですね。だってこのアルバムは、「そもそも基本的にジャズ」ですから!1つの音楽の完成形・到達点だと思いますね。

いろんなところでこのアルバムのエピソードが語られていますので、ジョアンがどうの、クリード・テイラーがどうの、アストラッド・ジルベルトがどうの、ということはそちらにゆずります。

このアルバムは、ボサノヴァの代名詞的に知られるゲッツの、ボサノヴァのスタイルをバックに演奏した唯一のアルバムでしょう。ブラジル人リズムセクションというならほかにもありますが、ルイス・ボンファもローリンド・アルメイダもボサノヴァの人ではなかったし。

1963年に録音されたこのアルバム、そのときまだ「Jazz Samba」が売れ続けていたので、ヴァーヴはあえて発表を遅らせ、1964年3月にようやく世に出ました。しかしゲッツはそのときにはボサノヴァばかり演奏するのに嫌気がさしてあのゲイリー・バートン入りのバンドを結成して、ジャズフェスにも出演しています。1964年8月の月間レコード販売数では全ジャンルで2位になりました。1位はビートルズの「A Hard Day's Night」だったそうです。

アルバムの内容としては、とにかく皆さん(アストラッドも含めて)非常にすばらしい。ジョビンのシンプルなピアノがまたいいムードを作っています。冒頭、シングルにもなった「Garôta De Ipanema」もゲッツのサブトーンがいいですが、「Doralice」から続く3曲のほうがゲッツのソロが乗っていて、ゲッツの生涯の中でもベストに近いプレイなんじゃないのかな。ジョビンの曲以外にアリ・バホーゾの曲も入れるなど、おそらくジョアンの意見も反映されている。

アストラッドをフィーチャーした「Corcovado」に続き、「Só Danço Samba」は転調を繰り返してゲッツがどんどんソロを展開する秀逸な内容。このアルバムのハイライトです。ゲッツの歌心があふれています。それから、このあともゲッツがレパートリーにしている「O Grande Amor」、これよりあとの録音と違い、静かにシンプルに決めています。

Vivo Sonhando」は後年の有名なイントロがないのが残念だけど、エンディングはすごくかっこいい。

ちなみに、ゲッツの評伝では基本的に2人がリスペクトし合っているような記載だけど、よく言われているようにジョアンはいろいろ恨みもあるんだろうな。ブラジル側の書籍ではかなりひどく書かれているし。

 

ゲッツ/ジルベルト

ゲッツ/ジルベルト