スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Stan Getz And Guests Live At Newport 1964

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 ゲイリー・バートン入りカルテットの発掘音源。そのわりには音量バランスがいいというかゲッツの音がくっきりしていて、発掘もの特有のストレスは感じない。

レパートリーはこのカルテットの録音ではおなじみの曲ばかり。冒頭、「Waltz For A Lovely Wife」ではまだ場が温まっていないような気もするけどゲッツがすぐにエモーショナルなソロを展開する。
ゲッツは1962年のボサノヴァのヒットで大スターになっていたゲッツだけど、逆にこのままではジャズミュージシャンとしてのアイデンティティが失われると考え、1964年1月にはゲイリー・バートンの入ったレギュラーバンドを組み、「普通」のジャズ路線に戻っていった。ところが1964年3月に「Getz/Gilberto」が発表されるととんでもなく売れて、結局バートン入りのバンドのツアーではアストラッド・ジルベルトを帯同していく(「Getz/Gilberto」の録音は1963年)。聴衆としてはギターもいないゲッツのカルテットでアストラッドの歌というと、レコードとのサウンドの違いに少し戸惑ったかもしれない。さておき、これまではそのツアーの内容は疑似ライブの疑いもある「Getz Au Go Go」でしか聴けなかったけど、この発掘盤のおかげでさらに聴けるようになった。なお本アルバムは「Getz Au Go Go」の約2か月前の録音。
本アルバムのポイントは、アストラッドのほかにチェット・ベイカーがゲストで共演していること。もっともアストラッドとチェットが共演しているわけではないけど。あと、ジャケットには書いていないけどフィル・アーソも参加している。アーソはテナーでなくピアノを弾いている。
前半のゲッツのカルテットでは、かなりアグレッシブな演奏が聴ける。そして、この時期に「Sweet Rain」を演奏していることに驚く。1967年のスタジオ録音に先立って、すでにレパートリーになっていたんですね。
その後、ゲッツがやけにハイになってMC、アストラッドが登場する。ゲッツがアストラッドを紹介すると聴衆は大歓声。「Wow!」みたいな客の声にゲッツも反応して「Wow!」とか言ってるんですよ。アストラッドの歌は相変わらずです。「Garôta De Ipanema」の、変に色気をつけた歌い方には閉口するけど、この録音は貴重です。アストラッドの出番が終わった後もゲッツがMCで「Isn't She Lovely?」みたいなことを言ってるんですよ。ツアーの最中は2人はベッドも共にしていたような記述が評伝にありますけどね。なんだか聴いていてこっちが恥ずかしくなる。

 続いてチェット・ベイカーが登場。何なのだろう、このステージ。一貫性がない。録音年月日は7月3日オンリーだけど、ゲッツは1つのステージでゲストを2人も呼んだの?フィル・アーソも出てくるし。チェットは割と調子が良くて、いいプレイです。よくよく考えると、チェットとバートンの共演って珍しいですよね。チェットとゲッツの共演と言えば「マイルス・デイヴィス初リーダーセッションの曲を演奏する」がお約束。しっかり「Little Willie Leapes」を演奏しています。

ボーナストラックとして最後に2曲1970年録音の追加収録がある。実はゲッツの「1970年の録音」というのはこれしか見つかってないんじゃないかな?探せばあるだろうけど。ところが、これが最悪。ゲッツはヨレヨレ、全然身が入っていない。時間の中でフレーズを垂れ流しているだけ。特に「A Night In Tunisia」では尺を間違うし、バックの演奏がダメ。全体的にコード感、ブリッジ感、進行感がまったくない演奏は、これはミスではなくリハモのつもりなのかな?ヴァンプは間違いとしか思えないほどだし。めちゃくちゃな演奏。さらに、もう1人テナー奏者が参加しているのに表記がない。これがまた、もともとゲッツに似ていて、ゲッツがヨレヨレでキリっとした演奏ができず二流ミュージシャンに近い状態だから、初心者には区別がつきにくい。

And Guests: Live At Newport 1964

And Guests: Live At Newport 1964